「公道に降り立った本物のナンバー付きWRC車両を捕獲!!」GC8型インプレッサマニアの終着点!

モノコック無加工への徹底した拘り!

多くの構造変更を受けナンバー取得

競技車両にナンバーを付け、ストリートで乗る。そんな妄想を膨らませるクルマ好きは少なくないだろう。それを実現したのが“GC8Kai”さん。実際にWRCを戦ったGC8 WRカーでナンバーを取得したのだ。

「昔からWRCが好きで、中でもGC8がお気に入りでした」と言うGC8Kaiさん。聞けば、セリカやランエボを始めとした他のマシンには目もくれず、同じインプレッサでもGDB以降には全く興味がないという。こちらが思わず清々しい気分になってしまう程、とにかくGC8一筋。現在所有しているのも、4ドア、4ドアワイドボディ仕様、2ドア(タイプR)、極め付けは22Bを3台(!)と生粋のGC8マニアぶりを見せ付ける。

「22Bは憧れでしたね。発売当時、ちょうど仕事で独立した頃だったので金銭的に厳しく、新車では買えなかったんです。仕事が軌道に乗ってから中古で22Bを手に入れたのですが、それでは飽き足らなくなって、結局WRカーに行ってしまったんですよ。“これ”がGC8の究極形だと思っているので」。

ベース車両は、恐らく1998年のサンレモラリーで横転し、ボディ左側に大きなダメージを負った個体だと思われる。そうと断定できないのは修復後、シャシーナンバーがどこにも刻印されていないからだ。

ともあれモノコックの状態で持ち込まれたWRカーは、これまでカテゴリーを問わずレーシングマシンの製作やメンテナンスを手掛けてきたヤマオカアイオンで街乗りできるよう、パワートレインの搭載や各部の手直しを実施。さらに、市販車とは作りが大きく異なるため、ナンバー取得に向けて構造変更の申請を行ない、認可を受ける必要があった。

「左ハンドルであることもそうだし、足回りはサブフレームまで含めて全部。まず構造変更の申請が必要な箇所を洗い出し、一つずつ対策を施しました。その時に拘ったのが、“モノコックの加工は一切しない”ということ。貴重なWRカーですからね。ボディはオリジナルの状態を維持したかったんです」と、ヤマオカアイオン代表の春日井さんが説明してくれた。

街乗りできるようにエンジンはGDBのEJ20に換装。ミッションケースとセンタートンネルの干渉を避けるため、搭載位置が下げられている。エンジン本体はフルノーマルで、カーボン製エアクリーナーボックスはWRカー用を組み合わせ、電子制御スロットル化も図られる。左右ストラットタワー前方に固定されるのは車高調の別体式タンクだ。

「ボディはオリジナルのままですが、日常域での扱いやすさを考えて、制御系は今風に仕上げました」と春日井さん。そこでメインハーネスを新規に製作。センターコンソールの奥にセットされたモーテックM130とPDM30のコンビがエンジンマネージメントを担当する。

フロントサブフレームはスチールパイプで作られた専用品。スチールプレートをプレス成型した市販車とは全く異なり、前後バーの間にステアリングラックが収まる。サスペンション形式はストラット式を踏襲しながら専用設計のAアームが与えられ、ハブもプロドライブオリジナル設計のチタン製でバネ下重量の軽減に大きく貢献。ダンパーはビルシュタイン製ベースだが、実質的には大幅なリメイクを手掛けたプロドライブ製と言っていい。

ミッションはGDB用6速MTを検討したが、ケースが大きく、モノコック(センタートンネル)の加工が必要と判断して搭載を断念。よりコンパクトなGC8用5速MTを載せることになった。

後方から見たリヤサスペンション周り。サブフレームが専用品となるのはフロントと同様だ。リヤデフはサブフレームを加工することなくGDB用R180を搭載。ドライブシャフトはアウター側がWRカー用のまま、インナー側をR180デフに合わせてスプラインを切り直したワンオフ品を使用する。

ダッシュパネルやシートなど、内装は当時の状態をキープ。左ハンドルだから、ウインカーレバーが左側に付く。

チラッと写るリヤ両サイドの内装トリムはWRカーにも装着されていたという。ちなみに、イグニッションキーは存在せず、センターコンソール最下段のメインスイッチをオンにするだけでエンジン始動が可能。「キーはドアロックの施錠、解除に使うだけです」とオーナーのGC8Kaiさん。

トランクルームに設置されるのはアメリカ・ラジウムエンジニアリング製燃料タンク。これはオリジナルではなく、車検取得に向けてヤマオカアイオンで載せ換えられたものだ。手前の樹脂製タンクはウォーターインジェクション用。

手前は400台限定モデル22B。並べるとフェンダーアーチの形状が異なり、WRカーの方が大きいことが分かる。

まさに“アガリの一台”と言えるGC8のナンバー付きWRカー。ところが、GC8Kaiさんにはすでに次の目標があった。いわく、「今WRカーのパーツを集めているんですが、それをリトナに組んで、本物のパーツを使ったWRカーレプリカを作りたいんですよ」とのこと。尽きることなき探求心と好奇心。GC8Kaiさんの終着点は、どうやらまだ先にあるようだ。

●取材協力:ヤマオカアイオン 岐阜県恵那市山岡町下手向1163 TEL:0573-56-3000

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