「マフラーの後付けサイレンサーはエンジンにどれだけ悪い!?」実際に排圧とブースト圧の変化を検証してみた!

後付け消音装置は使い方次第でエンジンにダメージを与える

サイレンサー装着状態では3000回転がリミットと考えるべし!

テスト内容は、ブーストアップ仕様のS14シルビアに後付け消音装置として人気が高い「アペックスECV(3万1900円〜3万4100円)」を装着して、その直前の排圧(2次排圧=タービン以降の排気圧力)を計測するというものだ。

ECVという製品は、中間パイプにバルブユニットを挟み込み、ワイヤーでスロットルを開閉することで音量を簡単に調整できるというパーツだ。任意の位置でロックできる機構も付いており、付属のワイヤーは2メートル。車種専用設計のバルブ内径はトヨタ&三菱が61φで、それ以外は67φ。汎用も用意されていて、51φ〜93φの範囲で選択可能となっている。

2次排圧の値でエンジンへの影響を調べる

この2次排圧だが、圧力が高い=抵抗が大きいというわけで、簡単に言えば値が大きければ大きいほどエンジンに悪影響を及ぼす。2次排圧の上昇によるトラブル事例としては、排気上流部のガスケット抜け、最悪のケースは2次排圧につられて1次排圧(タービンまでの排気圧力)も上がってEXマニが割れたり、タービンブローなども起こりえる。

考え方としては、ノーマルマフラーや絞りのあるマフラーは2次排圧が高く、抜けが良いマフラーほど排圧は低くなるという感じだ。

そんな2次排圧の可視化は、フロントパイプ内の排気圧力を機械式ブーストメーターで表示させるという方法を採用。

具体的には、ECVを装着する直前のフロントパイプを一度外して、ドリルで穴開け。そこにホースニップルのアダプターを溶接して圧力を取れるようにした。機械式ブーストメーターのスケールは2キロのものを使用。また、今回はその他にブースト圧やパワーの変化もダイナパックで計測した。

テスト1:バルブ全開/4500回転

まずECV全開状態から。アイドリング時の2次排圧はゼロ(大気圧)の位置を指している。そこからアクセルを全開にして、事前に決めていた4500回転まで一気に引っ張る。その間メーターの針はわずかに動く程度で、数値もピークで0.1キロに届くか届かないくらいだった。

「2次排圧はほぼ大気圧ですね。これはつまり、ECV全開状態での抜けが良いという意味です。この仕様にはベストな排気環境かもしれませんね」とは、テストに協力してくれた裏方のレース系チューナー。この状態でのブースト圧はピークで0.75キロだった。

テスト2:バルブ全閉状態/4500回転

続いてECVを全閉状態に。アイドリング時の排圧はゼロで変わらない。そこからバルブ全開状態と同じように4500回転までアクセルを踏み込む。するとメーターの針は跳ね上がり、2次排圧はなんと1.1キロに到達! 一方のブースト圧は、0.2キロで張り付いてそれ以上掛からない状況だった。

「今回はエンジンのことを考えて4500回転までにしたけど、高回転まで回したら2次排圧はもっと上がるでしょうね。パイプ内がこれだけの圧力になってしまったら、ECV全閉状態のままで踏むのは危険。3000回転あたりでの2次排圧はコンマ2〜3キロだったから、常用するならそのあたりまでと考えましょう」(前出のチューナー)。

テスト結果

■2次排圧の変化

ECV全開状態ECV全閉状態
アイドリング0キロ0キロ
3000回転0キロ0.2〜0.3キロ
4500回転0.1キロ1.1キロ

ECV全開状態だと2次排圧は低い数値で推移しつづけた。一方、全閉状態だと回転数を上げるにしたがって2次排圧が上昇。4500回転ではブースト1.0キロオーバーという完全に危険領域に突入してしまった。

■ダイナパックによるブースト圧&パワーの変化

そしてブースト圧とパワーの変化。ダイナパックによる計測で、やはり想像以上の差が生じた。

  • 赤線:バルブ全開=ブースト0.75キロ(197ps)
  • 紫線:バルブ開度50%=ブースト0.7キロ(195ps)
  • 緑線:バルブ全閉=ブースト0.3キロ(115ps)

2次排圧テスト同様に回転数は4500rpmを上限にした。ECV全開状態での最大ブースト圧は0.7キロ弱。しかし、全閉状態ではどれだけ踏んでもコンマ3が限界。グラフの紫色はECVハーフ状態のものだが、どちらも全開状態に近いデータになった。パワーグラフは、そんなブースト圧の差がそのまま馬力に反映されている。ECVは全開か全閉のどちらかで使わないと意味がないということかもしれない。

■近接排気音結果

計測はALTIAの音量計を使用。とても小さいツールだが、国交省が認める車検機器だったりする。
  • アイドリング:ECV全開85.5dB/ECV全閉81.6dB
  • 4500回転:ECV全開117.2dB/ECV全閉102.7dB

アイドリングでは4dB、4500回転では10dB以上の消音効果を発揮。これはかなり良い結果と言えるだろ。なお、テストに協力してくれたチューナーは、過去の経験則からテールから差し込むタイプのインナーサイレンサーも今回のECVと同じような結果になると断言。つまり、何らかの手法で音量を下げる時は、全開走行は禁止ということだ。

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