「400馬力の魔改造バネットラルゴという衝撃」夢のフル公認ファミリーカーに迫る!

ショーカースペシャルと侮るなかれ!

フル公認の快速ファミリーカー製作が進行中

「家族も増えて、“スライドドア付きのファミリーカーが欲しい”という話になりまして、自分が子供の頃に父が乗っていたのと同じ古いタウンエースを探したんです。そんな時にネットでたまたま見つけたのが、このバネットラルゴなんです」。

そのように語るのは、静岡県の鈑金工場“イシカワボディ”代表の石川さん。あのNOB谷口が惚れ込んだ180SXをはじめ、ローフォルムが際立つ極上のショーカーを数多く手掛けてきた鬼才ビルダーだ。

石川さんが手にしたバネットラルゴは、CA18ET型ターボエンジンと5速MTを搭載している個体にエアサスが組み込まれたカスタムカーだった。

しかしフレームは腐食し、機関系も快調とは程遠い状態。それもあって、思い切ったレストアとモディファイに踏み切ったという。最終的な目標は、“400馬力のフル公認取得済みファミリーカー”だ。細部を見ていく。

リヤの足回りは純正の5リンク式を潔く撤去し、Y31シーマのセミトレを一式移植。マルチリンク化も考えたそうだが、公認車検取得にはバネットラルゴよりも車重の重い車種からの流用が必須となる。それを考えると、Y31シーマのセミトレを移植するのが最も現実的な手段だったというわけだ。

エアサスの制御は、エアリフトパフォーマンスの3Pシステムによって行われる。ショーカー並みのローフォルムから走行可能状態まで、瞬時に車高を切り替えることが可能だ。

リヤサスの移植にともなってホイールベースを15〜20mm程度延長。リヤタイヤを後方にスライドさせることで、当時のコンセプトカーを思わせるスタイルを築き上げた。

リヤフェンダーの形状も拘りのポイントで、アーチを切り上げつつ後方に向かって斜めに跳ね上がるデザインを採用。さらに若干のブリスター仕様とすることで、独創的な雰囲気を演出している。

ホイールは前後ともにBBS-RSの16インチ。フロントが9Jでリヤが10Jとなる。キャリパークリアランスやフェンダーとの位置関係などを考慮し、手持ちのリムとディスクを組み合わせて最適なオフセットのものへと仕上げたという。ブレーキは前後ともにR32タイプMの純正対向キャリパーをセット。

機関系は広島県のショップ“Total Create E.PRIME”(トータルクリエイト イープライム)の手により、S13シルビアのSR20DETが搭載された。

元々、石川さんがシルビアや180SXを所有していることもあり、「どうせ直すなら」と今後のパーツ面でも有利なSR20DETを選択したそうだ。ボディと機関系を別々で仕上げていることもあり、現状の完成度はとりあえず敷地内で自走ができるレベル。今後、再び車両をE.PRIME送って細部を煮詰めていくという。

下回りから確認できるタービンは、HKSのGT-RS。LINK(フルコン)での綿密なマネージメントにより、エンジン本体ノーマルのまま400psを狙っていく。

ミッションはS15シルビアの6速MTを搭載。5速ではなく、あえて6速を選んだのはマシン全体の作り込みレベルを上げるための一手と言える。

ワインレッドの内装がノスタルジックな雰囲気を放つインテリアは、ステアリングがBBSの4本スポークタイプに交換されている程度で基本的にはストック状態をキープ。開放的なパノラマルーフはまさにファミリーカーに相応しい装備だ。

今後はきちんと走れる状態にまでエンジンのセッティングを煮詰めつつ、公認車検取得へ向けて動くこととなる。今作は、公認車検に豊富なノウハウを持つ“garage34”代表の小野木さんから助言を受けつつ製作を進めているとのことで、400psのファミリーカー誕生は単なる夢物語ではない。

石川さんは「無駄に速いファミリーカーになりますね(笑)」と話すが、その無駄こそがカスタムの面白みというもの。プロの職人が“趣味の一環”として情熱を注ぐ魔改造バネットラルゴ、公道に降り立つ日が待ち遠しいかぎりだ。

PHOTO:Akio HIRANO
●取材協力:イシカワボディ 静岡県浜松市北区三ケ日町下尾奈1139-1

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