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FRセダンから路線変更、初代ビスタの兄弟モデル！
見た目はダイハツシャルマンの兄貴分っぽい？
1982年にビスタの兄弟車として登場した2代目カムリ。初代はセリカの4ドア版（正式車名セリカ・カムリ）として、18R-G型2L直4DOHC搭載のGTをトップグレードに据えるFRスポーティセダンだったが、2代目では駆動方式FFのラグジュアリー系に改められた。
トヨタ初のFF車は1978年発売の初代ターセル／コルサ。が、エンジン横置き搭載のFF車は、この2代目カムリ（と初代ビスタ）が初となる。80年代に入って、さすがにトヨタも「エンジン縦置きのFFでは駄目だ！」と気づいたようで、その後、エンジン横置きFFが主流になっていったことを考えれば、賢明な選択だったと言えるだろう。
グレード展開は上から順にZX、SE、XT。いずれも直4SOHCの1S（グロス100ps／15.5kgm）を搭載する1.8Lモデルと、2S（同120ps／17.6kgm）搭載の2.0Lモデルが用意され、1.8Lモデルには廉価グレードのLTもラインナップされた。
また、1984年のマイナーチェンジで2.0L直4DOHCの3S-G（同160ps／19.0kgm）を載せるスポーティグレード、ZXツインカム／XSツインカムを追加。さらに、XE、XTサルーン、XTには、キャブ仕様からシングルポイントインジェクション仕様に改められてパワー＆トルクが向上した1S-iLU（同105ps／16.0kgm）と、1.8L直4ディーゼルターボの1C-TL（80ps／15.5kgm）が搭載されるなど、モデルバリエーションを一気に拡大した。
ちなみに、ボアφ84.0×ストローク90.0mmで1995ccの2Sに対して、3S-Gはφ86.0×86.0mmのスクエア型で1998cc。SOHCとDOHCの差はあるが、当時トヨタはボアストローク違いで2種類の2.0L直4エンジンを擁していたのだ。実はこれ、後の1.8L直4DOHC、1ZZと2ZZの関係に似ていたりする。
取材した2.0EFI ZXは2S搭載の前期型トップグレード。組み合わされたミッションは5速MTまたは4速ATで、取材車両は後者。カタログでFF車世界初の電子制御式ATを謳っていたモデルだ。
80年代前半のクルマらしく、スタイリングは直線基調のスクエアフォルム。見た目は至ってオーソドックスな3ボックスセダンだ。特徴を挙げるなら、その時代に2600mmという、全長4.4mのクルマにしては長めのホイールベースだろう。スペース効率に優れ、車内空間を広く取れるエンジン横置きFFならではのメリットをアピールしている。
ボディが直線基調なら、ダッシュボードも同様。ステアリングとATセレクターノブは、アフター品に交換されていた。
メーターは、ZXに標準装備のエレクトロニック・ディスプレイメーター、通称デジパネだ。当時の流行で、ハチロクをはじめトヨタ車の多くに採用されていたのだが、改めてチェックしてみると子供のオモチャのようで、瞬時の視認性もアナログ式のほうが良いのでは？ と冷静に思ってしまった。
メーターパネル右下に備わるスピードアラーム（ZXとSEに標準装備）も変態的だ。30～65km/hの間で5km/h刻みに設定でき、ダイヤルで任意にセットしたスピードに達するとアラームで警告してくれるという装備だ。カタログには「スピードメーターを見なくても自然に制限速度をチェックできるようになりました」とあるが、使う機会などほぼないだろう。
さらに、センターコンソール。AM/FMマルチラジオ＋5スピーカーはZXに標準装備。その下のカセットデッキとオートエアコンはオプション設定されていた。また、ZXの2Lモデルのみ、オプションのAM/FMマルチ電子チューナー付きカセット一体ラジオと同時にクルーズコンピュータの装着も可能だった。取材車両に対する唯一の心残りは、それが装備されてなかったことに尽きる。
8つの調整機能を持つZXの運転席。前後別々に高さを調整できるシートリフターや2段折れシートバック、ランバーサポートなど各部のキメ細かなアジャストが可能となっている。シート形状こそ異なるが、8ウェイマルチアジャストシートはデジパネと並んで、当時トヨタ車の多くに採用されたものだ。
一方の後席は、ロングホイールベースによって広々としたレッグスペースを実現。ZXは左右2名分も3点式シートベルトが採用される。
また、センターアームレスト先端のレバーを引き上げることで3段階のリクライニングもできるなど、最上級グレードに相応しい仕上がり。各部に真面目なトヨタの設計が見て取れる。
それはそうと、このホイールを見て「おおっ！」と思った人は生粋のカムリマニア確定。というのも、中期型で加わったZX／XSツインカムに標準装着の14インチアルミホイールだからだ。そう、取材車両は誰も気づかないであろう純正流用チューンを行なっているのである。ちなみに、タイヤサイズはZX標準の185/70R13から195/60R14にアップ。
基本ライフサイクルが長いトヨタ製エンジンの中で、この2Sは生産期間わずか4年という異端児。要は「失敗作だった？」ということだ。そんなエンジンを搭載していることも、カムリのマニア度を高めている大きな要素の一つと言っていい。
そんなカムリは後席足元の広さが尋常ではなく、あのコロナスーパールーミーに匹敵するほど。つまり、セダンとして完成度が高く、新車も相当売れたと思うが、現存台数の少なさから晴れてマニア車の仲間入りを果たしたというわけだ。
■SPECIFICATIONS
車両型式：SV11
全長×全幅×全高：4400×1690×1395mm
ホイールベース：2600mm
トレッド（F/R）：1465/1420mm
車両重量：1065kg
エンジン型式：2S-ELU
エンジン形式：直4SOHC
ボア×ストローク：φ84.0×90.0mm
排気量：1995cc 圧縮比：8.7：1
最高出力：120ps/5400rpm
最大トルク：17.6kgm/4000rpm
トランスミッション：4速AT
サスペンション形式（F/R）：ストラット/パラレルリンクストラット
ブレーキ（F/R）：ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤサイズ：FR185/70R13
TEXT&PHOTO：廣嶋健太郎（Kentaro HIROSHIMA）