「30年前に勃発した国産V8セダン頂上決戦」!セルシオC仕様vsインフィニティQ45【ManiaxCars】

公開日 : 2020/07/30 15:00 最終更新日 : 2020/07/30 15:00


高級セダンの伝統を昇華させたトヨタ、日産は新たな価値観を提案!

 

V8エンジンでも走りのテイストは大きく違う

 

日本がバブル景気の絶頂を迎えた1989年、トヨタと日産それぞれの“頂点”を極める2台が揃って登場した。それがUCF10セルシオとG50インフィニティQ45だ。

 

先に発売されたのはUCF10/11セルシオで1989年10月。その翌月、G50インフィニティQ45が世に放たれた。

 

 

3つの楕円を左右対称に組み合わせてトヨタの“T”を表している(他にも意味はあるが、ここでは割愛)、お馴染みのエンブレム。トヨタ創立50周年を記念した発表されたものだが、これを初めて採用したのがUCF10セルシオだった。

 

エンジンは新開発となる4LV8の1UZ-FE型を搭載し、A/B/C仕様と3グレードで展開。最上級C仕様にはエアサスペンションが採用され(車両型式UCF11)、後席の居住性や快適性を高めたFパッケージも設定された。

 

 

オールアルミ製で90度のバンク角を持つ1UZ-FE型エンジン。カムカバーに“V8 FOUR CAM”と刻まれ、サージタンクにはトヨタエンブレムが付く。UCF10セルシオが発売される直前の1989年8月、まずはクラウン(UZS131)に搭載されて登場した。クーリングファンは世界初となる電子制御油圧駆動式を採用。カップリングファンや電動ファンに比べて小型軽量化が図れるだけでなく、騒音を大幅に低減できるのがメリットだ。

 

 

高級車に相応しいプレステージ性を持ちながら、快適で安らぎを感じさせるデザインとされたインテリア。センターコンソールやドアトリムスイッチパネルにウォールナットの本木を採用し、ソフトで肌触りのいい本革と3種類の高級ファブリックをシートやドアトリムに採り入れる。

 

 

メーターは、冷陰極管タイプ自発光式オプティトロンを世界で初めて採用。イグニッションオンでメーターが浮かび上がり、昼夜を問わず優れた視認性を誇る。

 

 

力強い存在感と気品を漂わせる伸びやかなスタイリング。同時に空力性能も突き詰められ、Cd値(空気抵抗係数)はラグジュアリーセダンとして世界トップレベルの0.29を達成した。また、CLf値(フロント揚力係数)もスポイラーレスで0.04とされ、超高速走行での安定性をより確かなものにしていた。

 

 

一方、インフィニティQ45のスタイリングの基調に流れるのは、日本人の美意識である「簡潔さが醸し出す優雅さ」。それを最もよく表すのが、不評を買ったグリルレスのフロントマスクだ。エンブレムは日本の伝統工芸の味わいを活かした七宝焼とされる。

 

エンジンは新型4.5LV8、VH45DEを搭載。グレードは装備の違いにより、標準車、Lパッケージ、市販車世界初の油圧アクティブサスペンションを装着したセレクションパッケージが用意された。

 

 

「高級車らしい余裕ある走り」と「スポーツカー並みの快適な走り」を両立することを目的に開発されたVH45DE型。動力性能と併せて静粛性を徹底的に追求したトヨタ1UZ-FE型とは、そもそも開発の出発点が大きく異なっていたりする。

 

排気量が500cc大きいこともあってカタログスペックでは1UZ-FE型を20ps/4.8kgm上回り、レブリミットはこのクラスのエンジンにしては異例の高回転型と言える6900rpmに設定されている。

 

 

「人とクルマの融合」をキーワードに各部が仕上げられたインテリア。そこで重視されたのが「触感の統一」を図ることで、たとえばステアリングホイールとATセレクターノブに巻かれる本革は1頭の牛から採るようにしたり、内外のドアハンドルはひんやりとした感触を出すため、樹脂製ではなくあえてダイキャスト製とされていたりする。

 

 

メーターは盤自体が光るEL照明を採用。光のムラが少ないため、長時間の夜間運転でも疲労を抑えられる。

 

 

UCF10セルシオとは対照的に、コンパクトにまとめられたリヤコンビネーションランプ。インフィニティQ45も優れた空力特性をうたい、Cd値0.30、CL値(空気揚力係数)0.21を実現。面白いのはCYm偏揺モーメント係数を重視してることで、それは高速における直進安定性向上のためだ。

 

取材車両はセルシオがC仕様、インフィニティQ45が標準車。発売から30年が過ぎた今、この2台が並ぶ姿を見るのは新鮮だ。

 

どちらも存在感においては負けていないが、フォーマルセダンの王道をゆく優等生的なセルシオに対して、奇抜なフロントグリルレスのインフィニティQ45は不良な大人の雰囲気を漂わせていて実に対照的だ。セルシオは万人受けするが、インフィニティQ45は好き嫌いがハッキリ分かれる…と言っても間違ってはいないと思う。

 

もちろん、対照的なのは見た目の印象だけでなく、走りもそうだ。

 

 

静粛性を徹底的に追求したセルシオは運転席に座ってドアを閉めた瞬間、外の世界から隔離される。イグニッションキーをひねるとメーターが浮かび上がり、直後にV8エンジンが始動。それは、走り出してもシュルシュル…と滑らかな鼓動を伝えてくるだけで自らの存在を主張することはないし、街中だけに限ればロードノイズも相当に高いレベルで遮断されている。車内を満たすのは異様な静けさだ。

 

乗り味はフラットライド。ステアリングを通して路面の細かな凹凸まで伝えてくるが、それらが乗り心地にまるで影響しないのはエアサスペンション採用のC仕様だからに違いない。

 

 

対するインフィニティQ45も基本的に静粛性は高いが、エンジン音やロードノイズの侵入など、セルシオに一段劣るというのが正直なところ。ただ、それを不快に感じることはない。少なくともセルシオ以上に走っている感、運転している感があって、これが日産の味付けなのかなと思った。

 

それと、インフィニティQ45ではVH45DEの存在感が大きい。スムーズなのは確かだけれど、どこか粒の荒い回転フィール。蓄えられたパワーが放出を待つ、そんな力強さに漲っている。実際のところ1UZ-FEを排気量で500cc上回るだけに、パフォーマンスにおいては全域で一枚上手だ。

 

 

こんなに濃密なクルマが30年前に生み出され、世界に飛び立っていったという事実。今さらだが、日本のいちクルマ好きとして誇らしく思う。

 

■セルシオC仕様

車両型式:UCF11

全長×全幅×全高:4995×1820×1400mm

ホイールベース:2815mm

トレッド:FR1565mm

車両重量:1750kg

エンジン型式:1UZ-FE

エンジン形式:V8DOHC

ボア×ストローク:φ87.5×82.5mm

排気量:3968cc 圧縮比:10.0:1

最高出力:260ps/5400rpm

最大トルク:36.0kgm/4600rpm

トランスミッション:4速AT

サスペンション形式:FRダブルウィッシュボーン

ブレーキ:FRベンチレーテッドディスク

タイヤサイズ:FR215/65R15

 

■インフィニティQ45

車両型式:G50

全長×全幅×全高:5090×1825×1435mm

ホイールベース:2880mm

トレッド:FR1570mm

車両重量:1780kg

エンジン型式:VH45DE

エンジン形式:V8DOHC

ボア×ストローク:φ93.0×82.7mm

排気量:4494cc 圧縮比:10.2:1

最高出力:280ps/6000rpm

最大トルク:40.8kgm/4000rpm

トランスミッション:4速AT

サスペンション形式:FRマルチリンク

ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク

タイヤサイズ:FR215/65R15