「まさに弾丸小僧!」スペシャリティクーペは表向きの顔、リーザターボOXY-Rの恐ろしさ【ManiaxCars】

公開日 : 2020/03/23 11:00 最終更新日 : 2020/03/23 11:00


超ショートホイールベースでよく曲がる。一代限りで消えた孤高の軽スポーツ!

 

ミラでいえばTR-XXに匹敵するホットモデル。高回転域でターボパワーが炸裂する!

 

1986年に乗用5ナンバーL100Sと、商用4ナンバーL100Vが発売されたリーザは、前年登場した2代目L70系ミラベースのスペシャリティクーペだ。

 

89年1月のマイチェンで、スポーティグレードとして550cc直3SOHCキャブターボ(EB20型50ps)を載せるTR-ZZと、電子制御インジェクション仕様(EB26型64ps)搭載のTR-ZZ EFIがラインナップされた。

 

 

90年3月、排気量アップ(550→660cc)や全長拡大(3195→3295mm)といった軽自動車の規格変更に伴い、ミラがL200系にフルモデルチェンジ。リーザは半年後の90年8月にベースがL70系ミラのまま、パワートレインのみL200系ミラのモノに一新され、メーカー純正ニコイチ仕様(笑)とも言えるL111Sに進化。同時に乗用5ナンバーモデルに一本化された。

 

そんな生い立ちを持つリーザに取材車両のOXY-R(オキシ―アール)なるグレードが追加されたのは91年1月のこと。そこで搭載されたのが64ps/9.4kgmを誇るEF-JL型エンジンだ。

 

 

L200系ミラTR-XX譲りとなるこのエンジン、SOHCターボにして4バルブヘッドを持ち、7500rpmで最高出力を発揮するかなりの高回転志向。後に登場するDOHCターボのEF-DETですら6400rpmで64psなのだから、いかにEF-JLが高回転高出力型か、わかるというものだ。

 

ちなみにEF系エンジンは22種類もの展開を誇るが、EF-JLの7500rpmという最高出力発生回転数は、EF-VE(58ps)とEF-VD(60ps)の7600rpmに次ぐもの。NAのDOHCに肩を並べる回転数で最高出力を発揮するSOHCターボって、もうそれだけでワクワクしてくる。

 

 

タービンはIHI製VQ20・B3。もしかしてストーリアX4みたいに、アクチュエーターロッドが調整式でブーストアップ出来たりして…と思ったが、どうやらそうではないようだ…。

 

もはや見かけることがほとんどなくなったリーザを前にして、まず思ったのが「ボディ小さ!」ということ。さすが旧規格の軽自動車…というよりも、基本は前後バンパーを大型化することで帳尻を合わせた旧々規格のボディなのだから、そう思うのも当然だ。

 

タマゴのようなフォルムはスタイリッシュ。しかし、よく見るとBピラーまでは伸びやかなのに、それ以降は“寸詰まった感”を醸し出していて、実は真横から見ると微妙にバランスが崩壊しているあたりが堪らない。

 

と、外装を眺めながらアレコレ妄想を膨らませてるところで、あることに気がついた。「リーザって、もしかしてホイールベース短い?」と。調べてみるとリーザのそれは2140mm。ベースのL70系ミラが2250mmだから、まず110mmも短いのだ。

 

さらに、その数値はバリバリのスポーツモデルであるビートの2280mmやAZ-1の2235mmはおろか、スバルR1の2195mmさえも上回る…いや、下回る(か?)もので、リーザより短いのはカプチーノの2060mmくらいなもの。

 

 

ダッシュボードのデザインを始め、フルドアトリムが採用されるなど、軽自動車にありがちなチープ感を払拭。助手席側はエアコン吹き出し口までを覆うパネルがコンソールボックスの蓋になっている。ステアリングは変更されていた。

 

 

黒に赤い文字がスポーティなメインメーター。タコメーターは1万rpmフルスケールで、8000rpmからがレッドゾーンとなっている。水温計が左下に、燃料計が右下に配置される。センターコンソールは上からエアコン吹き出し口、マニュアルエアコン操作パネル、1DINのオーディオスペース。

 

 

組み合わされるミッションは5速MTと3速AT。ビスカス式LSD標準装備というのもマニアだ。取材車両は5速MTで、ギヤ比は1速から3.752・2.182・1.428・1.000・0.865で、ファイナル比は5.285。1〜2速がちょっと離れているが、8000rpm近くまで回してチェンジすると4500rpm前後で2速に繋がるから、問題なし。

 

 

乗用5ナンバーでありながら、後席の居住性を完全に無視したかのようなシートポジション。前席がボディ前後方向のほぼセンターに配置されるだけでなく、低い着座位置で足を前に投げ出すような姿勢を取らされるから、アイポイントも含めてスポーティな雰囲気は満点だ。

 

別体式ヘッドレストを持つ前席はフロア対して座面が低く、サイドサポートも悪くない。背もたれには“OXY-R”のロゴが入り、座面下には引き出し式の小物入れも付く。

 

 

一方の後席は背もたれが短く、ヘッドレストも備わらないなど、プラス2的なモノと考えて良さそうだ。

 

 

当時、純正オプションとして設定されていたリヤバイザーを装備。後方視界を遮ることなく、直射日光が入ってくるのを防いでくれるアイテムだ。そこはかとなく昭和の香り漂うあたりが良い!

 

 

ラゲッジスペースはミニマム。後席背もたれを前に倒すことでスペースの拡大が可能。スピーカーボードは分厚い木材を使ってワンオフ製作されたものだと思われる。リヤハッチで開口部が大きいから、荷物の出し入れはしやすそう。

 

 

タイヤは標準の155/60R13に対して、取材車両は今時流行のインチダウンで155/70R12サイズのDNAエコスを装着する。ホイールはブラックレーシングのエイトスポーク。

 

 

リヤアクスルの下あたりで分岐し、左右両出しとなる純正マフラー。リヤピースにサイレンサーが存在しないため、見た目にスッキリした印象だ。スポーティなリヤビューを演出するのに一役買っている。

 

ストローク感のあるクラッチペダルを踏み込み、シフトレバーで1速を選んで発進。わずか640kgに抑えられた車重は、静止状態からタイヤが転がり始める瞬間の動きで、「こりゃ軽い!」と体感できる。多用する2500~3000rpmあたりのトルクは十分。日常域で扱いやすく、早めのシフトアップでダラダラと流してもダルさを感じることはない。

 

続いて、ゼロスタートからの全開加速を試してみる。1速で回していくと4000rpmを超えたあたりからパワー感に弾みをつけ、そこから先は7000rpm+αまで瞬時に回り切る。2速にシフトアップ。パワーバンドを外さない低くクロス気味のギヤレシオもあって、加速感が途切れることがない。

 

3速に入れても同様で、思っているよりも遥かに早くスピードメーターが100km/hに達してしまった。クルマが小さいから、確かに体感的に速く感じる部分もあるのだろうけれど、それを差し引いて考えても実際コイツは相当に速いと思う。しかも、中回転域からターボらしい二次曲線的なパワーの盛り上がりを楽しませてくれるのだから、乗っていて痛快なわけだ。

 

 

元々は女性ユーザーを狙ったお洒落な2ドアスペシャリティだったのかもしれないが、ターボエンジン載せたOXY-Rに限っては完全に武闘派な1台。こんなナリして、アルトワークスやミラTR-XX、ミニカダンガンの向こうを張れるのだから、やっぱり変態と言わざるを得ない。

 

■SPECIFICATIONS

車両型式:L111S

全長×全幅×全高:3295×1395×1335mm

ホイールベース:2140mm

トレッド(F/R):1215/1205mm

車両重量:640kg

エンジン型式:EF-JL

エンジン形式:直3SOHC+ターボ

ボア×ストローク:φ68.0×60.5mm

排気量:659cc 圧縮比:8.0:1

最高出力:64ps/7500rpm 最大トルク:9.4kgm/4000rpm

トランスミッション:5速MT

サスペンション形式(F/R):ストラット/セミトレーリングアーム

ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ドラム

タイヤサイズ:FR155/60R13

 

TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)