「変態アイテム、純正ハードトップを装着したマイティボーイ」まさかの2速AT! 新車価格50万円以下の珍作【ManiaxCars】

公開日 : 2020/03/22 16:00 最終更新日 : 2020/03/22 16:00


バカ売れした人気モデルだと思ってたのに、生産台数は2万3000台だったという事実。

 

下でネバるエンジン特性、車重540kgは超絶軽い!!

 

2代目セルボをベースとして、リヤセクションをピックアップに仕立てたマイティボーイは1983年2月に登場。直3SOHCキャブ仕様のF5Aを搭載し、カタログ値28ps/4.2kgmと、思わず笑ってしまうスペックだ。

 

 

ユーザー層をかなり限定する2シーターの商用4ナンバー車だけに、てっきりシングルグレードだと思っていたが、実は「アルト47万円!」のさらに下をゆくビックリ価格、45万円の廉価グレードPS-Aと、装備充実49.8万円の上級グレードPS-Lが存在し(いずれも4速MT)、遅れて2速ATのPS-QLが追加。都合3グレードで展開していたのは、今回調べて初めて知った事実だったりする。

 

後、85年2月のマイチェンでヘッドライトが丸型から角型に変更され、フロントグリルもデザインを一新。エンジンスペックは31ps/4.4kgmに向上し、PS-Lはホイール&タイヤのサイズアップ(10→12インチ化)やフロントディスクブレーキ化の他、5速MTが搭載されるなど、結構な手直しが行われた。

 

取材車両は角型ヘッドライトの2速ATだから、後期PS-QL。少し車高を下げて、今時あまり見かけなくなった爆音系の砲弾型マフラーに交換されているが、それ以外はノーマル状態をキープ。良く言えば貴重な、悪く言えばなぜこのようなイジリ方をしたのか謎な1台だ。

 

 

ボンネットの下に収まるのは、550ccのF5A型エンジン。1978年、フロンテに初めて搭載されたエンジンだ。同じエンジン型式で、2バルブSOHCインタークーラーなしターボ(キャブ)/同インタークーラー付きターボ(EPI)、3バルブSOHCスーパーチャージャー、4バルブDOHC/同インタークーラー付きターボと多くの仕様が存在した。

 

このクルマを取材するに至った理由はふたつ、まずひとつめは2速ATということ。1速で発進して、一度シフトアップしたらそれっきり…って、一体どういうこと!? と思ったからだ。

 

 

実際、この2速ATは街乗りに限定すれば我慢できるレベル。多段化が進み、トヨタやホンダが10速ATを実用化なんて言っている今の時代、2速ATは歴史の生き証人として重要文化財に指定されても良いと思う。

 

 

もうひとつは、これまで見たことがない純正オプションのハードトップを装着していたからだ。このハードトップ、装着するとピックアップならではのスタイリッシュで軽快感溢れるサイドビューが一瞬で崩壊する。

 

当時の純正オプションカタログによると、FRP製の本体にアクリル製サイドウインドウと脱着式ガラスルーフを備え、9万7000円也。純正オプションで、モノを考えたら決して高くないし、荷物を濡らさずに済むから、実用面でのメリットも十分あるってところまでは理解できる。

 

しかし、車両価格が50万円以下なのに、その5分の1にも相当する純正オプションって一体…と思うわけで。当然、数が出たとは思えず、だからこそ程度極上の状態でこうして残ってることが奇跡としか言いようがないのだ!

 

 

程度が良く、ノーマル状態を保ったダッシュボード周り。右前のタイヤハウスに押しやられ、アクセル&ブレーキペダルは大きく左側にオフセットしている。

 

 

スピードメーターは120km/h、タコメーターは8000rpmフルスケールで6500rpmからがレッドゾーン。その間に燃料計と水温計が上下に配置される。

 

 

上段からマニュアルエアコン、AMラジオ&灰皿、エアコン吹き出し口&シガーライターが並ぶセンターコンソール。一応、最低限の快適装備は備わっている。

 

 

シートは、全面ビニール生地で平板なPS-Aに対して、PS-L/QLではハーフモケットを採用。サイド&ニーサポートも張り出したスポーツタイプが標準となる。

 

 

想像以上に広いシート後方のスペース。エクステンドキャブを持った今時の軽トラ、ハイゼットジャンボやスーパーキャリイ以上の余裕がある。これなら大型スーツケースも十分積める。

 

 

その分、荷台が削られて「ピックアップとしてどうなの?」という話もあるのだが、背もたれを全開まで倒せるなど、居住性に関して大きなメリットを生み出している。

 

 

ちなみに、荷台の奥行は660mmでピックアップトラックとしては異様に短い。まぁ、ボディサイズを考えたら当然だ。

 

 

せっかくなので、さらにハードトップの細部を見ていく。リヤガラスゲート中央下にある開閉用ノブ。いかにも昭和的な形状で、「クルマにこんなカタチのパーツ使うの!?」と思わずにはいられない。写真は閉まってる状態で、ノブを90度回すとゲートが開く。

 

 

一方のアオリは、左右両端のレバーを内側に倒すことでロックが解除。手前に倒すことができる。

 

 

ハードトップはステーを介して蝶ネジと10mmナットで固定。これでも取り付け強度に問題はないんだろうけど、純正オプション品にしてはお粗末な感じがするのは自分だけ?

 

 

ルーフにはガラスサンルーフが設けられ、レバー操作によって脱着が可能になっている。しかし、ココを開けてどうするんだろう??

 

 

さらに外装を見ていくと、透明の樹脂を素材とした純正サイドバイザーを装着。マイティボーイの英文ロゴが入るなど凝った作りになってる。恐らくコレもマニア垂涎のレアアイテムだと思われる。

 

 

純正鉄ちんホイールはトピー製で、リム幅は「そんなのあるんだ!」と思うこと確実な3.5J(笑)。そこに組み合わされるのは、純正と同じ145R12サイズのグッドイヤーG47だ。

 

キーをひねってエンジン始動。キャブ仕様だけど、気難しさなど一切なく一発で火が入り、ブロロロロ…とアイドリングを始める。グリップの細い2本スポークステアリングに若干の心許なさを感じつつ、ATセレクターレバーでDレンジを選び発進!

 

とにかく走りが軽い。車検証で確認すると、車重は前軸重360kg+後軸重180kg(!)=たったの540kgしかない。もちろん速いとは言えないし、街中で流れをリードするのも怪しいけれど、普段のアシとして乗る分には31ps/4.4kgmでも全く不満なしだ。

 

それとノンパワステのハンドリングが非常に良い。145幅のタイヤなら据え切りも楽々だから取り回しに困ることはないし、何より路面の状況をダイレクトに伝えてくれるのが好印象。もうひとつ言えば、パワステトラブルと無縁でいられるのもありがたい!

 

 

ハードトップ装着によって、見た目の印象が大きく変わった後ろ姿。ボディが白いだけに、取って付けた感もハンパない。ちなみに、アオリの左側にはご丁寧に“AUTOMATIC”のエンブレムが付く。

 

今でも熱狂的なマニアが存在するマイティボーイは、人気モデルに違いない。が、思いのほか少ない生産台数や2シーターピックアップゆえ、希少性や特殊性を兼ね備える。そして、トドメに2速ATと純正オプションのハードトップ…。コレは“隠れ変態グルマ”と断言する!

 

■SPECIFICATIONS

車両型式:SS20T

全長×全幅×全高:3195×1395×1290mm

ホイールベース:2150mm

トレッド(F/R):—/—mm

車両重量:540kg

エンジン型式:F5A

エンジン形式:直3SOHC

ボア×ストローク:φ62.0×60.0mm

排気量:543cc 圧縮比:9.7:1

最高出力:31ps/6000rpm

最大トルク:4.4kgm/3500rpm

トランスミッション:2速AT

サスペンション形式(F/R):ストラット/リーフリジッド

ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム

タイヤサイズ:FR145R12

 

TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

●取材協力:アンティークス 愛知県安城市池浦町小山西72-4 TEL:0566-77-8500

 

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