「新旧ホンダレーシングマシン、夢の競演!」1300クーペ9&スプーンS2000スーパー耐久仕様

公開日 : 2020/03/19 06:30 最終更新日 : 2020/03/19 06:30


30年という世代の差を超えて、鈴鹿サーキットで2台が邂逅!

 

脈々と受け継がれるHONDA RACINGの血統。

 

まずは2ドアスポーツクーペとして1970年に登場した1300クーペ9から見ていこう。エンジンはSOHCながら4連キャブを備え、1.3Lで当時クラス最強となる110psを誇った。

 

当然、メカニズムの凝りようもスゴくて、シリンダーヘッド&ブロックとも当時珍しかったオールアルミ製、冷却は一般的な水冷式ではなくホンダ独自の2重空冷式とされ、潤滑にはドライサンプ方式を採用してたのだ。これらは60年代後半、ホンダが第1期F1参戦で実戦投入した技術のフィードバックだった。

 

鳴りモノ入りで登場してレースにも参戦したクーペ9だが、結果は散々。重い2重空冷エンジンやトリッキーな動きを見せるリヤサスがアダとなって、わずか2年足らずで表舞台から消えてしまう。そう、早い話“失敗作”だったということ。余談だけど、それを踏まえて登場したのが、オーソドックスな設計の初代シビックSB1だ。

 

 

そんなクーペ9をヒストリックカーレース仕様に仕上げて、中山や岡山国際を走り回ってるのがHさん。現代の技術を駆使して、キチンと走れるよう各部を大きく手直ししているのだ。

 

 

まず、エンジンは2重空冷式をキャンセルして、シリンダーブロックの空冷フィンを加工。当時RSC(ホンダワークス)やヨシムラが採用していた走行風によるダイレクト空冷式に変更しているのだ。オイルの負担を減らすためヘッドライト位置に2基のオイルクーラーを追加して、容量アップと潤滑&冷却性能の向上も図っている。

 

 

インパネはシンプルそのもの。スミスのタコメーターを中心にオオモリ油温&油圧計がセットされる。また、ペダルの変更やステアリングボス延長によって、ドライビングポジションも後方に下げられている。

 

 

また、足回りはリヤサス方式をクロスビーム式からトーションビーム式に大幅変更。センターを曲げることでネガティブキャンバーがつけられ、前後にスタビライザーも追加されている。さらに、ダンパーはTRDのAE92用を加工装着。「中山に合わせて回頭性重視のセッティングになってますが、リヤの接地性は格段によくなりましたね」とHさんは言う。

 

その他、ミニ用ステアリングラックを流用したり、クラッチをワイヤー式から油圧式に変更したりと、アップデートが図られたパートはそれこそ数え上げたらキリがない。

 

Hさんは、当時ダメ出しされたクーペ9をなんとかモノにしようと試行錯誤を繰り返している。そんなチャレンジ精神は、他でもないホンダの社風そのものでもあるわけだ。

 

 

続いてS2000。2009年にホンダのラインアップから姿を消した稀有なFRピュアスポーツだが、その戦闘力や楽しさが通用しなくなったわけではない。それは、スプーン代表の市嶋氏がスーパー耐久レース(以下、S耐)参戦マシンとして長きに渡ってAP1を選んでいたことにも現れている。

 

このマシンが参戦していた当時のST4クラスは、ライバルのDC5インテRの方が車重(約1020kg、AP1は約1120kg)的に有利。また、S耐をパーツ開発の舞台として考えるならば、FD2シビックRで参戦するのが筋だったかもしれない。それでも、市嶋氏がAP1を選んだのは、その魅力に惹かれたからだ。

 

 

エンジンルームに収まるF20C。レギュレーションに合わせて吸気系はノーマル、エンジン本体はチューニング範囲が規制されており、いわゆる“N1仕様”としてフルバランス修正が施される程度。ヘッドガスケットを0.46mm(0.45mmと0.47mmのハイブリッド)に換えて圧縮比を高め、CPチューンによって270psを発生する。

 

 

エキゾーストパーツは、ノーマル+α程度の改造しか認められていない。テールエンドに触媒が見えるのは、S耐ではクラスを問わず触媒の装着が義務付けられ、見て確認できる位置への装着がレギュレーションで決まっていたから。

 

「S500から始まった“エスの系譜”を感じさせるクルマですよね。S2000はボディ、エンジン、ミッションと、全て専用で作られ“操る喜び”は格別。このクルマでレースがしたいって思わせる魅力があるんです」と語る。

 

もちろん、S耐参戦は趣味だけではなく、厳しい改造規制の範囲内で生まれたスプーンのS2000用パーツは、ボディキットや補強パーツを始め、その数は少なくない。中でも、専用設計されなかったデフは、プレートはもちろん、ケースやマウント剛性まで見直しが図られた。スリックタイヤを装着し、高回転を駆使することで、ノーマルデフでは油温の上昇によりプレートが焼きついてしまうからだ。

 

「デフはS2000で唯一といえる弱点ですから、しっかりと手を入れてやることが必要ですね」と市嶋氏。続けて、「チューニングすることで楽しさも増す、まさに名車と呼べる1台。ハチロクやB110サニーのように語り継がれていくでしょう」。

 

 

ダッシュ貫通タイプの7点式ロールケージや、マックスレーシング製マルチメーターが装着されるものの、ダッシュボードがノーマル形状となる室内は、一般的なサーキット仕様と大きく変わらない。

 

 

もちろん、アンダーコートは全て剥がされている他、自社製のカーボンバケットシートの採用により軽量化を敢行。

 

また、整流効果や冷却性能だけではなく、燃費性能も重要となる耐久レース。その中で生まれたのが、エアロバンパーやボンネット、そしてクーペキットだ。エアロに限った話ではなく、耐久レースで使えるパーツはデイリーユースでの負担も軽減する。それが、市嶋氏が耐久レースに参戦し続けた理由でもある。

 

S2000は、30年に渡ってフォーミュラからツーリングカーまでを戦ってきた同氏が太鼓判を押す、世界に誇るスポーツカーなのだ。

 

TEXT:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)/PHOTO:市 健治(Kenji ICHI)

●取材協力:スプーン 東京都杉並区荻窪5-2-8 TEL:03-3220-3411

 

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