「伝説のS130Zを追いかけ続けるZ32」継承と進化、名門チームのZブラザーズに迫る

深紅のボディカラーが美しい2台のフェアレディZ。どちらも湾岸最高速系チーム『ミッドナイト』に所属するチューンドで、1台は東名レースに端を発するストリート最高速ステージを最前線で駆け抜けてきたS130Z。もう1台は、その姿をモチーフに製作されたZ32だ。密接な関係にある2台の全容に迫っていく。(OPTION誌2011年8月号より)

 

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追う者と追われる者、絶えることなき戦いの血脈

 

ミッドナイトS130Zをモチーフにボディを製作したZ32

 

“強烈な片思い”の始まりは、Z32オーナーが免許を取得した直後まで遡る。偶然ストリートで出会ったミッドナイトS130に一発で心を奪われ、以来、美しいレッドのZが脳裏に焼き付いて離れなくなったという。

 

自らがミッドナイトのメンバーとして走るようになり、同じチームに属するようになったものの、依然として消えないS130Zへの憧れ。そして、Z32オーナーは意を決してS130Zオーナーにお願いする。「S130Zをモチーフに、自分のZ32の外装をモディファイしたい」と。

 

 

S130Zのオーナーは「同じミッドナイトに所属するZ乗りとして、とても嬉しいお願いだった。でも、彼がチャラい奴だったら断っていたと思う。真面目でクルマ好き、当然それまでの関係があったからOKしたんだよ」と当時を振り返る。

 

言葉にすれば、確かに『ミッドナイトS130Zをモチーフに作られたZ32』ということになる。ただし、このZ32が誕生するに至った経緯は、ミッドナイトメンバー同士の絆や、先輩から後輩へ託される想いなど、同じステージで走り続ける二人以外には分からない、様々な要素が絡んでいるというわけだ。

 

それにしても、日本のチューニングシーンにおいて伝説的存在であるS130Zと、そのエクステリアのエッセンスを巧みに取り入れたZ32の共演は圧巻の一言に尽きる。近寄ることさえ拒むような、強烈な存在感を漂わせている。

 

 

それぞれを見ていく。S130のベースは1978年式の280Z-T。もう40年以上も前のクルマだというのに、そうと感じさせないのは、純粋に速さを追求し、常に最高速の世界でトップランナーとして走り続けてきた本物のチューンドカーだからだ。

 

 

装着されるエアロは、ABR細木エンジニアリングが手がけたフルボディキットだ。バンパーやフェンダーといった、各種エアロパーツのデザインをさらに際立たせているのがカラーリング。深みのある濃いレッドはフェラーリテスタロッサ用ロッソコルサで、Z32も同じくこのカラーでペイントされている。

 

 

ホイール&タイヤは17インチ。フロント8J、リヤ9JのパナスポーツC8Sに、215/45、245/40サイズのポテンザRE-01が組みあわされる。足回りは、最高速向きのセッティングが施されたABRオリジナル全長調整式車高調+ベステックス製スプリング。また、ブレーキはフロントMA70レース用ローター改、リヤBNR32用ローター改に、BNR32キャリパー改がセットされる。

 

 

ダッシュボード、そしてセンターコンソールには各種追加メーターがカーボンパネルとともにインストールされ、スピードメーターは300km/hフルスケールに交換、タコメーターは1万rpmスケールのBNR32用が流用される。ノーマルの雰囲気を活かしながら、機能的に仕上げられている。

 

 

エンジンは、腰下にHKS89φ鍛造ピストン、L20用コンロッド、LD28改フルカウンタークランクシャフトを組みこんだL28改3.1Lで、ヘッドにはNAフルチューン並の加工が施され、ABRオリジナル304度カムシャフトがセットされる。タービンはIHI RHC6-VX55のツイン。かつて追加インジェクターをレビックでコントロールしていた燃料&制御系は、720ccメインインジェクターをモーテックM4で制御する今時の仕様に改められている。

 

現在セッティング中のため、最高出力は470ps弱に留まるが、ブースト圧1.0キロで680ps、300km/hオーバーも可能な戦闘力を秘めているのだ。

 

 

一方のZ32は、最高速チューンを得意とするチューングショップ“レヴォルフェS.A.”がメイキングを担当。

 

 

エンジン本体は、東名89φ鍛造ピストンによって3.1Lに排気量を拡大する他、各部のバランス取りや燃焼室加工を施し、基本性能はもとより、踏み続けても壊れない耐久性を追求。タービンはS14シルビアオーテックバージョンの斜流タービンを加工流用することで、最大ブースト圧1.25キロ時に500psを発生する。

 

 

エクステリアは、アブフラッグのボディキットをベースにワンオフ製作。ストレートに伸びるブリスターラインが特徴的なフェンダーやフロントフェイスの細かな形状だけでなく、クルマ全体から放たれる雰囲気までをもS130を見事にトレースしている。

 

 

実際、エクステリアの完成までに1年以上の月日を費やしたというから、その拘りはハンパではない。あまりにも高い完成度を目の当たりにして、そもそも関係のなさそうな箇所までS130Zをモチーフに作り込んだのでは? と感じてしまったほどだ。

 

ホイール&タイヤは、BBS-LM(F9J R10J)に、アドバンネオバ(F235/40 R265/35)をセット。前後ともに18インチだ。

 

 

300km/hフルスケールのスピードメーターが組み込まれる他、アブフラッグステアリングや追加メーターが装着されている程度で至ってシンプルなコクピット。ボディ補強も7点式ロールケージ&サイドバーの装着、リヤゲート開口部のスポット増しなど、最小限に留められている。

 

 

「このS130Zは存在自体が特別で、とにかくカッコ良い。どんなに時代が変わろうとも、その魅力は色褪せないと思います。そういったところを表現したい気持ちがありました」とZ32オーナーが言えば、S130Zオーナーも「凄く品があって綺麗なフォルム。とても気に入ったよ」と、そのスタイリングに太鼓判を押す。

 

30年以上という長い走りの歴史を持つS130Zの姿に魅了され、そこに自身の愛機を近づけていく。それはただの表面的なコピーではなく、思想まで含めた継承に他ならない。