「L型チューンに革命を起こしたツインカム4バルブヘッドに迫る」OS技研のTCヘッドを搭載した4台のチューンド旧車に注目!

L型エンジンの性能を飛躍させるOS渾身のチューニングヘッド!

 

モノ作りへの挑戦、それが全てのはじまりだった

 

強化クラッチやスーパーロックLSDなどで知られるOS技研。チューニングパーツメーカーとしての歴史を辿っていくと、70年代半ばから80年代初めにかけて完成させたL型用ツインカム4バルブヘッド“TCシリーズ”に行き着く。たった数十基が世に出ただけで封印された幻のヘッド(TC24は後に復刻され、TC24-B1Zとして限定販売された)だ。それを組みこんだバリバリ実動状態の4台が集まる…という情報を聞きつけて、我々は岡山まで飛んだ。

 

 

いまや軽自動車でも当たり前だが、40年前はレースエンジン専用のメカニズムといっても過言じゃなかったツインカム4バルブ。事実、当時市販されていたツインカム4バルブエンジンは第1世代のGT-Rに搭載されたS20型のみで、トヨタの2T-Gや18R-Gはツインカムでも2バルブだった。そんな時代に、レーシングコンストラクター的な活動を行ってたOS技研代表の岡崎さんは「モノ作りを手がける自分の実力を試したい」と奮起。吸排気をクロスフロー式としたL18用のツインカム4バルブヘッド“TC16”の設計、開発に着手した。

 

スゴイのは独学で得た知識や技術をもとに、全てのパーツが手作りとされていることだ。アルミ製シリンダーヘッド本体は砂で型を作った鋳造品、カムは素材に使うクロームの配合から手がけ、しかもカムプロフィールを生み出す工作機械まで自作したという。「やってみなけりゃどんなモノができるか分からん。ひたすらトライ&エラーのくり返しやったよ」と岡崎さんは当時を振り返る。

 

こうして1975年、まずはTC16が完成。初期型MAIはギヤのみでカムを駆動していたが、ギヤノイズがあまりにも大きく違法改造車として警察にマークされやすかったため、チェーン駆動の改良版MAIIが誕生したという経緯を持つ。スペックはL18ノーマル(シングルカム+吸排気ターンフロー式)の115ps/15.5kgmから、なんと205ps/20kgmまで向上。それ以上に驚くべきはVTECのような可変カム機構に頼ることなく、レブリミット9000rpmを達成したことだ。シングルカム+ターンフロー式だと、例え耐久性を犠牲にしてもレブリミットは8500rpmというのが未だにL18チューンの常識だから、TC16が与えた衝撃はハンパでなく大きかったわけだ。

 

 

岡崎さん曰く「直4用がモノになると、当然次のターゲットは直6になる。直6がいければ最終的にはV12にも対応できるわけで、技術者いうかモノ作りの職人として夢が大きく膨らむんよ。直4で満足してたら、どうやってもV8どまり。その差はでかいよな」とのこと。L28用のTC24-B1が完成するのはTC16から遅れること5年、1980年のことだ。

 

ごく初期の数基だけは、日産のレース用エンジンLZ型のピストンを流用し(後にOS技研オリジナル鍛造ピストンを使用)、コンロッド(L14流用)とクランクシャフトは高回転化に見合った耐久性を持たせるためタフトライド加工が施された。

 

カムはIN/EXともに280度。作用角からすると上振りの特性に思えるけど、実際はクロスフロー化と絶妙なバルタイ&点火時期によって2000rpmあたりからトルクが盛り上がってくるなど、扱いやすさも兼ね備えていたりする。それでいて当時のチューンドL28としては驚異的な最高出力325ps、最大トルク33kgmを発揮。その数値は、今時の3.0LクラスNAメカチューンに比べても決して見劣りするものじゃない。

 

 

フルレストアと同時にボディ補強が行われたOS技研の富松S30Z。エンジンルームに収まるのはLZ用87.8φピストンが組まれ、排気量が2870ccとされた初期型のTC24だ。キャブレターはウェーバー55φを組む。

 

 

「L28だと50φがついていたら“スゴイ!”と言われるんやけど、TC24は55φでもアイドリングからレブリミットの8500rpmまでスムーズに回りきる。シリンダー容積分だけキッチリ吸気が行われているんやろな」と富松さんは分析する。ちなみに富松さんは、開発当時TC24がライバルとしていたポルシェ930ターボ(実測300ps)も所有。あらゆるステージで2台を走らせ、TC24の方が速さで勝っているということを自ら実証したそうだ。

 

 

当時は搭載車種に合わせてワンオフ製作されたというエキマニ。「フィッティングの良さから、おそらくS30用だと思う」と富松さん。

 

 

マフラーはサイレンサー部のみトラスト製。メインパイプは50φのワンオフフルデュアルで、パワーチェックを行ないながらレイアウトを決めたそうだ。

 

 

このGC10は当時OS技研が製作した最終号機と言われるTC24を搭載。キャブレターは標準仕様のウェーバー48φだ。このエンジン、1982〜83年に作られてから今までタペット調整を行なったくらいで一度もオーバーホールをしていないという。

 

 
実は、オーナーは20数年前にもTC24を所有していて810ブルーバード→S130Zに搭載してたそうだが、モロモロの事情があって泣く泣く手放したという。それから25年ほどを経て、再び手にしたのだ。「かつては警察にマークされて、せっかくのTC24を“他人には見せられない寂しさ”がありましたけど、今は正々堂々と乗れる。良い時代になりましたよね」というコメントが印象的だった。
 

 

これまでのオーナー歴がハッキリしている由緒正しきTC24。もともとF30レパードに搭載されていたそうで、エキマニもF30用を手直しして使っている。

 

 

TC24のパワーグラフをデザインした化粧プレート。イベントなどでクルマを展示するとき、ナンバープレートの上にセットされる。

 

 

今回集まったTCシリーズのなかで、独特なチューニングを施していたのが、この美しいハコスカ。

 

 

燃料系はキャブレターに代えて6連スロットル+GT-R用444ccインジェクターを、点火系はデスビを廃してクランク角センサーを備え、日本では珍しいイギリスのDTA製フルコンで燃調と点火時期を制御してるのだ。しかもCPセッティングは試行錯誤しながらオーナー自らが行なったというからビックリ! 「TC24を手に入れたら、インジェクター仕様にしたいと思ってたんですよ」とはオーナー。まさかTC24でこんな仕様が存在してるとは…。いずれにしても、銘機を後の世代のチューニング技術でアップデートさせた好例と言えるだろう。

 

 

ワンオフの等長エキマニは6→1タイプ。点火順にエキマニを集合させることで優れた排気効率はもちろん、迫力のエキゾーストノートも実現している。

 

 

助手席の足元にセットされたDTA製フルコン。インターネットで同じCPを使ってる人を探し、セッティング方法のレクチャーを受けたそうだ。

 

 

そして、最後はTC16を搭載した510ブルーバードはOS技研のデモカーの登場だ。

 

 

L18ベースでキャブレターがソレックス44φというのは当時と同じだが、オリジナル鍛造89φピストンで排気量を1940ccに拡大し、圧縮比も12に設定(かつては88.5φピストンで1918cc、圧縮比10.5)されているのが違いだ。岡崎代表は「パワーチェックはしてないけど、おそらく220ps前後は出てるはず」と語る。

 

 
ボンネットとトランクパネルはリスタードのワンオフ品でウェットカーボン製。軽量かつ高剛性なだけでなく、仕上がりの美しさも特筆モノだ。
 

 

タコメーターは9000rpmからがレッドゾーン。ミッションは右上が1速、左上が2速で、2〜5速は一般的なHパターンとなるオリジナルクロス5MTを搭載。

 

 

元々は競技用として開発されたTCシリーズだが、生産台数が当時のホモロゲ取得に必要な50基に満たず、結局FIAやJAF公認のレースで使われることは無かった。かといってストリートマシンに組めば、違法改造のレッテルが貼られる時代。OS技研が認めたごく一部のユーザーにしか販売されなかったTCシリーズは、90年代半ばの規制緩和まで表舞台にその姿を見せること無く、ひっそりとアンダーグラウンドな世界に生きるしか道がなかったのだ。

 

●取材協力:オーエス技研 岡山県岡山市中区沖元464 TEL:086-277-6609

 

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