「幻のミツビシ旗艦モデル“初代ディグニティ”を捕獲!」4.5LV8を横置き搭載した異端児!【ManiaxCars】

後席でふんぞり返って“重役ごっこ”を楽しめ!

 

5速ATのスムーズな変則に舌を巻く!!

 

2000年2月に登場し、翌01年3月までのわずか1年1ヵ月しか生産されなかったミツビシ幻のフラッグシップモデル、それが初代ディグニティ。同じタイミングで発売された初代プラウディアベースのストレッチリムジン仕様で、ホイールベースで250mm、全長で285mm延長されたボディを持つ。

 

 

ボンネットの下に収まるのは、ディグニティとプラウディアの最上級グレードC仕様専用に開発された4.5L V8DOHCの8A80型エンジン。樹脂製カバーで覆われているため極めて無機質な印象だけど、他のモデルに比べて明らかに大きな文字で“MITSUBISHI”、“GDI”、“V8 4500”と入るあたりに旗艦モデルとしての誇りが感じられる。

 

それをフロントに横置き搭載し、INVECS-II5速ATを介して前輪を駆動する。V8エンジンを載せた国産セダンは他にもあるけど、エンジン横置きFFってのはコイツ(とプラウディアC仕様)のみ。もうそれだけで我が道を突き進むミツビシの面目躍如(!?)だし、同時に確信犯的に変態グルマを生み出しているなによりの証でもある。

 

 

バルクヘッドに貼られたブレーキブースター定期交換のコーションシール。過去に数百台と取材してきたけど、こんなのは初めて見たかもしれない。また、足回りには電子制御エアサスペンション(ECS)が採用される。

 

これは初代デボネアからの伝統だと思うけど、ディグニティを目の前にすると「フラッグシップセダンは関連会社を含む重役のためにある」と揶揄される意味もなんとなくわかるわけで、そんなことやってるから生産期間1年ちょいで販売台数わずか60台弱…つまり、週に1台ペースでしか売れなかったなんて悲惨な事態を招いてしまうのだ。

 

もっとも、そんなクルマだからこそ今回の特集で取り上げる価値があるってもの。ミレニアムな年にミツビシが血迷ってくれた過去があるからこそ、ManiaxCars的には今こうして“おいしいネタ”として頂けるのだ。

 

 

まずは外装から見ていくと、ボンネット先端に装着されるマスコットは羽根を模したような形状で、台座部分には控えめにスリーダイヤが刻まれる。

 

 

また、センターピラー部には2本の縦長マーカーを装着。スモールライトに連動して点灯し、サイドビューにアクセントをプラスする。

 

 

続いて内装。フォーマルな雰囲気を醸し出すグレーでまとめられる。ステアリングホイールはウッド&レザーのコンビタイプとされ、ダッシュボードやセンターコンソールには木目調パネルがあしらわれる。ミッションはマニュアルモード付き5速ATのINVECS-Ⅱを搭載。オプティトロンタイプのメーターはスピード&タコメーターを中心として右側に水温計、左側に燃料計が配置される。

 

 

センターコンソールは上からMMCSモニターとエアコン吹き出し口、オーディオ&ナビ操作パネル、フルオートエアコン操作パネル、カセットデッキ、フタ付き小物入れ、開閉式シガーライター&灰皿が並ぶ。

 

 

モニター画面はMMCSのオープニングだ。

 

 

スカッフプレートは高級感にあふれたステンレス製で車名ロゴ入り。また、同じく車名ロゴが入る純正フロアマットは毛足が長く、フカフカとした踏み心地で、旗艦モデルに相応しいものとなっている。

 

 

表皮に本革が使われたシート。余裕で足を伸ばせる後席は、疲れをいやすことまで配慮した専用の“スーパーエグゼクティブシート”を標準装備する。左右別々にスライド&リクライニング調整が可能な他、バイブレーターやシートヒーター機能も備わる。ちなみに、特等席はレッグサポート付きの左側。

 

 

前席の間にはタワー型大型コンソールを装備。通常モニター部は隠されていて、フタを手前に引くとドリンクホルダーが現れる。また、助手席は電動で前倒しすることが可能。左後席に乗る人の開放感を高める。

 

 

センターアームレスト前方にはオーディオ、エアコン、シートの各調整スイッチを内蔵。その後方にはドリンクホルダーとシガーソケット付き小物入れが装備される。

 

 

さらに、専用ホルダーにはナビ&テレビを操作するリモコンも確認。

 

 

ルーフに設けられたエアコン吹き出し口とアナログ式時計。エアコンは前後左右4つのゾーンに分けて温度を制御するフルオートタイプとなる。

 

 

幅が拡げられたセンターピラー部には、上部にスモールライト連動型のデコレーションライトが、下部にマガジンラックが備わる。

 

本来は後席に乗るためのクルマだけど、まずは運転席に座って試乗に出かける。アイドリングはエンジンがかかってるのかどうかを確認してしまうほどに静かで振動も皆無。走り出してもその印象は変わらず、滑らかな吹け上がりとともにV8らしいサウンドをかすかに放ちながらも、エンジンが必要以上にその存在感を誇示することはない。

 

それから5速ATのフィーリングが素晴らしく、Dレンジで走っていると、どこで変速したのかがわからないほど。ミッション用ECUのセッティングがあまりにも巧みなことに思わず舌を巻く。あと印象に残ってるのは、アシストが強く操舵力がやたら軽いパワステと、ペダルタッチがフカフカで絶対的な制動性能が不足してるのでは? と思わずにはいられなかったブレーキだ。

 

不思議なのは、エンジンやミッションの良すぎるマナーが災いしてるからか、280ps/42.0kgmというスペックを体感しにくかったこと。それは車重が2150kgもあるから…というわけではない。同じ4.5LV8を搭載し、ボディがひと回り大きく車重もあるプレジデントロイヤルリムジンは、もっとパワフルな走りを見せてくれたからだ。

 

 

てなところで後席に移動する。イージークロージャーで最後はスッ…と閉まるから、ドアをバムッ! とやる必要はない。とりあえず背もたれを倒し、足を前に投げ出すお約束のポジションを取る。前席よりもさらに振動が少なく、ホント路面の上を滑っているような感覚で、まさに後席に乗る人のためのクルマということを実感した。

 

 

ちなみに、ディグニティはモノグレード。プラウディアのように3.5LV6Lの6G74型(240ps)を搭載し、装備の違いによるA仕様とB仕様、4.5LV8の8A80を載せるC仕様(実はコレも相当に変態)…というチンケな棲み分けなど存在しない。そう、ディグニティはディグニティでしかないのだ。

 

ショートホイールベース版プラウディア

 

 

要人向けに用意されたディグニティに対して、高級パーソナルセダンという位置付けのプラウディア。全長5050mm、ホイールベース2830mmでグレードはA仕様、B仕様、C仕様が用意された。AとBは3.5L V6の6G74(240ps)、Cはディグニティと同じ4.5L V8の8A80が搭載され、電子制御エアサスペンションをオプション設定。生産台数が60台に満たなかったディグニティは当然として、プラウディアC仕様のエアサスモデルも相当な変態と思われる。

 

■SPECIFICATIONS

車両型式:S43A

全長×全幅×全高:5335×1870×1485mm

ホイールベース:3080mm

トレッド:FR1615mm

車両重量:2150kg

エンジン型式:8A80

エンジン形式:V8DOHC

ボア×ストローク:φ86.0×96.8mm

排気量:4498cc 圧縮比:10.7:1

最高出力:280ps/5000rpm

最大トルク:42.0kgm/4000rpm

トランスミッション:5速AT

サスペンション形式:FRマルチリンク

ブレーキ:FRベンチレーテッドディスク

タイヤサイズ:FR225/60R16

 

TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

●取材協力:久野モータース 埼玉県本庄市宮戸199 TEL:0495-22-2221