86&BRZの理想的チューニングは何なのか? レーシングドライバー「木下みつひろ」が名門ショップのデモカーを通して探る
公開日 : 2019/03/01 06:30 最終更新日 : 2019/03/01 06:30
理想のライトウエイトFRを目指した名門の味付け
あらゆるシーンでストレスフリー! 乗り手を問わないオールラウンダー仕様
ユーザーのお手本となる1台としてデモカーを構築すべく、ストリートをメインにサーキット走行も楽しめる86メイクを進めてきたトライアル。
走りの痛快さを手軽に引き出すため、パワーアップツールとして選んだのが、NAライクなエンジン特性を得られるHKSのGTスーパーチャージャーだ。
当初はコスト面も考慮してエンジン本体には手を加えていなかったが、FA20チューニングの可能性を追求するべく2.1L化とともに、ヘッドチューン、強化シリンダーライナーといったアップデートを敢行。ブースト圧はそのままに、安心してスポーツ走行が楽しめるタフネスさを加えることで、完成度を一層高め上げた。
なお、パワーとトルクが高まるほどに、ライトウエイトFRはマシンコントロールがシビアなものになりがち。だが、乗り手を選ばないオールラウンダー仕様を目指したトライアルは、ハンドリングのリニアさよりもトラクション重視でフットワークをセットアップ。とくに駆動輪となるリヤのサスセッティングでは、伸び側ストロークを徹底重視し、ダウンフォースが得られないようなシーンでも安定した挙動となるように仕上げている。
一部分を突出させてしまうのではなく、ベース車両を分析してバランシングするトータルチューン。誰もが痛快に走らせることができるオールラウンダー仕様こそ、FRを楽しむためのベストアンサーと言えるだろう。
取材協力:トライアル
NAチューンではストレスフリーの痛快さが引き出せないと判断し、NAライクなエンジン特性で大幅なポテンシャルアップが可能なGTスーパーチャージャーをチョイス。ターボのようなトルク変化もないため、コントローラブルなFRマシンへと導くには打って付けだ。
低中速領域のトルクアップも狙いのひとつだが、スポーツ走行時のタフネスさを加えるために2.1L化や強化シリンダーライナーの打ち込みを新たに実施。マージン確保のために圧縮こそ落としているものの、各部の効率アップも含めて全域でのフィーリングが一層高まっている。
基本的に軽量化していないストリート仕様では、過給機チューンのポテンシャルに対し、パッド交換レベルではアンバランス。ストッピングパワーへ余裕を持たせることが安定した挙動へとつながるため、後期からオプション採用されたブレンボキャリパーを流用してブレーキを強化する。
いくらトラクションに拘った足回りでも、ハイスピード領域からのハンドリングやブレーキングで挙動が乱れるケースは多い。車検対応のストリート仕様でもリヤウイングで得られるダウンフォース効果は大きいため、トライアルでは角度調整式GTスポイラーを開発した。
快適仕様でまとめ上げているトライアル86だが、ミッションマウントのみリジッド化を敢行。これはスポーツ走行を楽しんでいる際に、シフトチェンジしづらくなる症状を解決するためのもの。テンポ良く走りが楽しめるようになるため、結果的に走りの挙動も安定する。
ハイパーマックスIV GTをベースに仕様変更を繰り返した足回りは、トラクションを逃がさないようにリヤの伸び側ストロークをしっかり確保。コントローラブルなハンドリングを弱アンダー傾向にしたマイルドなフットワークで実現する。
スペック
■エンジン:HKS 2.1Lキャパシティアップグレードキット(鍛造ピストン、I断面コンロッド、鍛造クランク)、カムシャフト(IN260度 EX266度)、スーパーパワーフロー、オイルクーラー/戸田レーシング エキマニ/サード ラジエター/トライアル ダブルサウンドマフラー、400ps仕様インタークーラー、ECU書き替え、強化シリンダーライナー、ポート研磨、燃焼室加工
■ドライブトレイン:HKS LAクラッチ/OS技研 スーパーロックLSD
■サスペンション:HKS ハイパーマックスIV GT(アイバッハスプリング FR12kg/mm)
■ブレーキ:後期純正 ブレンボ4ポットキャリパー+345mmローター(F)、ブレンボ2ポットキャリパー+316mmローター(R)/制動屋 パッド
■ホイール:ボルクレーシングTE37SL(10.5J×18+25)
■タイヤ:アドバンネオバAD08R(295/30R18)
■インテリア:ナルディ ステアリング/レカロ TS-G/タカタ4点式シートベルト
■エクステリア:トライアル フロントバンパー、ダウンフォースプレート、サイドステップ、リヤバンパー、リヤGTスポイラー
レーシングドライバー木下みつひろが語る理想のチューンド86
しなやかなリヤサス×弱アンダーステアをアクセルコントロールで曲げる!
「FRの場合、駆動輪であるリヤをどれだけしなやかに安定させられるかが最重要。安定しない状態からいくらアクセルを踏んでも、ステアを切っても、マシンは満足にコントロールできないからね。リヤが安定してから弱アンダーステアへと味付けすれば、アクセルで回頭性もラクにコントロールできる。
パワーのないノーマルの86だと、走行ロスから乗りにくくなってしまうケースもあるけど、まずはLSDとともにリヤ足を煮詰めていくといいね。ノーズが入れにくいからといってフロントを先に攻略していくと、リヤがブレイクしやすくなる場合が多いから要注意だ。
その点、トライアル86は理想に近い好セットアップだった。86はリヤが跳ねやすいのに、ギャップの多いワインディングでも終始しなやかで安定したトラクションを発揮した。パワーが増すほどシビアになるリヤが完全にドライバーの支配下に置かれているし、アクセルコントロールで狙ったラインをトレースしていけるから痛快だったよ」
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