【1992 ACURA NSX】いつかは日本の公道を…。大いなる夢を抱えてアメリカの大地を疾るNA1ロケットバニー仕様 | web option(ウェブ オプション)

【1992 ACURA NSX】いつかは日本の公道を…。大いなる夢を抱えてアメリカの大地を疾るNA1ロケットバニー仕様

SNSのおかげで国境を越えたミクスチャーが加速度的に進むカーカルチャー。アメリカで初めてロケットバニーの専用ボディキットを纏い、2014年のSEMAでセンセーションを巻き起こしたNSXもそんなムーブメントを象徴する1台だ。オーナーは日本のカスタム文化をこよなく愛するナイスガイ。彼が過ごした濃密な10日間と、その後の夢を聞いた。


ゴーイング・クレイジー! 熱狂の宴の前と後

 

ロケバニ&スーパーチャージャー! 無敵のコンテンツでSEMAに殴り込む

 

指定された住所にたどり着くと、そこは閑静な住宅街に建つ一軒家だった。ガレージにはお目当てのNSXと並んで、ポルシェ911も置かれている。

 

「次のプロジェクトカーさ。完成したらまた撮影に来てくれよ! ハハハハハ」。オーナーのロバート・チュウは体も大きいが、笑い声も同じくらい豪快なカーガイだ。口癖は「クレイジー!」。日本語の「ヤバい」と同じように、肯定するにしろ否定するにしろ、ともかく連発する。

 

 

ハイスクールの時からクルマいじりにハマり、日本語は読めなくてもOPTION誌を愛読していたロバート。シビックやインテグラが大好きなホンダガイで、当時新車として販売されていたNSXは憧れの的だった。

 

また、OPTIONに載っていた日本製のアフターパーツやJGTCのレーシングカーも自然と興味の対象になっていった。「こんなハイクオリティなパーツがすぐ手に入ってポン付けできるなんて、やっぱり日本はクレイジーだ!」といった感じで。そうして培ってきた知識とJDM愛が今大いに役立っている。

 

NSXを手に入れた当初は、ピュアでクリーンなNSX-Rルックへの変身を夢想していたロバートだったが、友人から思わぬオファーが届けられたことで、予想だにしない急転直下の展開を迎えることとなった。

 

 

それは当時完成されたばかりのロケットバニーのNSX用ボディキットをアメリカで装着できる車両を探しているのだが、付けてみないかという話だった。その頃、アメリカですっかり知名度を高めていたロケットバニー。ワイルドなワイドフェンダールックがもたらすインパクトは仲間内でも広く知れ渡っていた。そのNSXの第一号車に自分がなれるかもしれない…。あまりに急で大きな方向転換に当初はかなり戸惑ったそうだ。

 

そこでロバートは10年以上の付き合いになる盟友のフレディ・フェルナンデスに相談を持ちかけた。フレディはサンディエゴにあるオートファッションUSAというショップのオーナーで、日本にもスタンス系を中心とした多くのファンとカスタマーを抱えている。

 

 

ふたりで熟考した結果、“Let’s do it!”となったわけだが、NSXを出展するSEMAショーまで作業に費やせる日数は賞味10日間(!)。仲間やガールフレンドも手伝ってくれる中、まさに寝る間を惜しんで作業を続け、ぎりぎりのタイミングで完成させることができた。

 

2014年のSEMAに出展した当時は、ボディにブルークロームのラッピングをまとっていたこともあり、見た目のインパクトは絶大。周囲からのリアクションの大きさはロバートの想像を遥かに超え、SNSを通じた交流の幅も爆発的に広がったという。ショーの前と後で起きた違いに少し戸惑いつつも、人生のよき変化も楽しんでいる。

 

 

「このNSXで日本の道を走ることが夢。17歳のときから日本のクルマやカーカルチャーに影響を受けてきたんだからね。SEMAが終わった後に知り合いとストリートを走っていたら、まるでJGTCのマシンが公道を走っているみたいだと言われたんだ。それと同じことを日本のストリートでもやってみたくてね。どう、クレイジーだろ? ハハハハハ!」

 

Photo:Akio HIRANO  Text:Hideo KOBAYASHI

 

 

ミッドシップに収まるC30Aにマウントされるのは、グループMのスーパーチャージャー。イートン製のルーツ式ブロワーをベースに独自の設計が施されており、インテークにはもちろん高品質なエアフィルターが採用されている。鍛造ピストンやガスケットなどの内部パーツ、クラッチやフライホイールなどはアリゾナ州にあるサイエンス・オブ・スピード製を採用。VTECのセンターロッカーの振動を抑制するLMAキットというパーツも使用されている。AEMシリーズ2で制御され、パワーはタイプRを超える316hp(約320ps)をマーク。

 

SEMAショーに出展されたときはロケットバニーとエンケイがコラボした6666ホイールを装着していたが、現在はJDM大好きなロバートらしく、大定番のボルクレーシングTE37をチョイス。車高はAirREXのエアサスペンションで調整が可能だ。エアサスはショー映えするのはもちろんだが、乗り味や性能もひと昔前とは雲泥の差ということで、アメリカではかなりユーザーの幅を広めている。リヤコンパートメントに収まるエアタンクは、オートファッションUSAのフレディが遊び心を発揮し、ブランデーのヘネシーにインスパイアーされたデザインを採り入れた。

 

ロケットバニーといえばリベット留めのオーバーフェンダーが有名だが、NSX用のボディキットはボンネットとバンパーとフェンダーを一体化し、前ヒンジで開くクラムシェルカウルが特徴となっている。リヤは得意のバンパーレス風デザインで、大きなGTウイングやディフューザーも装備。当初はブルークロームのラッピングだった車体はホワイトでリペイントされた。

 

年式からは考えにくいほど美しいコンディションを保ったインテリア。パーソナルのステアリングホイールやブリッドのバケットシートを備え、シフトノブとシフトブーツはNSX-R用を装着している。AirREXのモニターを車内に備え、車高のコントローラーはキーホルダーとして常備。言わずもがな、ストリートを走る上でも車高調整機能は実に重宝する。

 

 

オーナーのロバート・チュウはタイヤメーカー向けにSNSを使ったマーケティングを行うなど、仕事でもクルマと切り離せない毎日を送る。婚約者のユーリ・リュウさんとは先日正式に結婚し、晴れて夫婦となった。SEMAに出展する前の地獄の10日間で、ユーリさんは男よりも小さな手をいかして狭い場所の部品交換を手伝ってくれたそうだ。旦那の趣味を理解する、よき伴侶にも恵まれた。

 

 

スペック

■エンジン:C30A改/ScienceofSpeed フォージドローコンプレッションピストンセット、LMA(ロスト・モーション・アッセンブリー)キット、MLS(マルチ・レイヤー・スチール)ヘッドガスケット/GruppeM スーパーチャージャー/ARP ヘッドスタッドセット/RC Engineering 550ccフューエルインジェクターセット/AEM シリーズ2 EMS/Downforce USA インテークファンネル/MASTERwerk ストレートパイプエキゾースト

ドライブトレイン:ScienceofSpeed スポーツクラッチ、スポーツフライホイール/NSX-R JDM ショートギア

■フットワーク:AirREX フルエアサスペンション、デジタルワイヤレスコントロール

■ホイール:RAYSボルクレーシングTE37(F9.5J×18 R10.5×18)

■タイヤ:Nitto NT01

■エクステリア:Rocket Bunny NSXボディキット

■インテリア:BRIDE ストラディアⅡローマックス カーボンケブラーシート、シートレール/TAKATA ドリフトⅢレースハーネス/NSX-Rシフトノブ、メッシュシフトブーツ/Gruppe M ブーストゲージ/カスタム ヘネシー インスパイアード Autofashion AirREXエアタンクセットアップ