【チューナー列伝】KAKIMOTO RACING・柿本由行 -Yoshiyuki Kakimoto- 【レジェンドが語る主張と展望】

2018/10/28 11:59

激動のチューニングシーンを最前線で闘い抜いてきたトップチューナーに、チューニング業界の展望を語ってもらった。今の時代に何を感じ、これからの時代に何をすべきか…。そのメッセージから未来のチューニングシーンを読み抜いてほしい。


KAKIMOTO RACING@柿本由行

カキモトレーシング 大阪府堺市西区浜寺船尾町東1-111 ☎072-265-5050

 

「地味な技術の積み重ねを忘れず、情熱を持って新たな時代のニーズに挑むべし!!

 

時代が進み技術も発展、ノーマルのクルマも速く、そして良くなっているのは確かやけど、今まで積み重ねてきた技術におぼれてしまって作り手に情熱がなくなっているのが今の時代とちゃうやろうかと思う。

 

確かに今のスポーツカーの理想を言葉にすれば「安全で速い」で間違いないやろうけど、制御でガッチガチにした新型車には魅力が感じられへん場合が多い。とくに国産のハイエンドスポーツにその傾向が顕著やと思うんよ。

 

極端に言えば「危なくてよう乗りこなされへんわ」というくらいの評価がでるくらいのほうが魅力的に感じる場合も少なくない。ユーザーの多くはバカじゃないから、自分の身に危険をまねくような運転はしない。だから自動車メーカーには、へんな制御を介入させず、もっとリニヤな動きをするスポーツカーを提供してもらいたい。

 

ワクワクしながら、そういうクルマを手にしてもっと性能を引き出そうというのが我々アフターマケットのサプライヤーの役目やと思う。

 

我々もいろいろ経験してきたことで、昔に比べると技術はとても高くなっている。だけど、その技術に溺れて情熱を失っている部分があると、質は高いのに魅力ない製品やチューニングカーができてしまう。

 

だからもっと情熱を持って、シンプルかつソリッドなモノ作りを目指し、もう一度自分たちを見直さなアカン。

 

お客が冷めてるというのも一利あるかもしれんけど、自分らまでもが冷めてたら何も生まれないやろ。だから、言葉は悪いけど麻薬のようなチューニングを提案して、感じてもらえるよう訴えかけていかなくてはいけないんやろうと思うな。

 

じつは最近、そういう情熱を海外のほうに感じることが多い。日本人がハングリーでなくなったのか、日本人が得意だった煮詰めて成就させるような作業までも欧米、アジアで進められている。

 

実際、海外のクルマにもパーツにも日本人には作り出せないいいものが多くなってきている。それは、技術や資金力、マーケットの違いもあるやろうけど、圧倒的に実現を目指すハートの熱さが違う気がする。

 

我々エンジニア職につくものは「自分はこういうものが作りたい、生み出したい」と願い、その日に向けて地味な技術の取得を積み重ねていかなくてはいけない。それは、今も昔も変わっていない。もちろん、ワシも夢見て実現できなかったことがまだまだたくさんあるけど、夢見て目指したから手に入れられたものも多い。

 

若い人の多くがそれに気付いて実践してくれれば、今のシラケムードは一気に変わると思う。

 

技術を身につけてもそれに溺れず、どんな時にもチャレンジングスピリッツは忘れずに!! チャレンジがあるからこそ、チューニングの世界がおもろいんやし、新しいニーズが生まれてくるんやからね。

 

 

人気マフラーブランドとして知られる柿本レーシングだが、その生い立ちはレース&チューニングガレージから。代表の柿本さんはチューナーとして、ドライバーとしても知られるが、いつかは自分の名前のついたエンジンを作れる環境を実現したいと思い描きながら現在に至っているという。

 

柿本イズムを継ぐべきスタッフへ、自らの身につけてきた技術とノウハウ、そしてスピリッツを踏襲すべく作り続けてきたのがデモカーのNSX。ワンオフカスタムが多いのは、スタッフが技術経験を積むための実験車両でもあるからだという。そして、技術とともに情熱を持って“作ること”“走らせること”を実践して欲しいという。何事もそこから始まるというのが柿本さんのポリシーで、それは時代にとらわれないものだという。