【2013 NISSAN GT-R】1/4マイルを8.39秒で走破するモンスターR

公開日 : 2018/09/21 01:03 最終更新日 : 2018/10/15 18:34

日本から海を渡って北米大陸へと上陸したモンスター「Godzilla」。アメリカのエンスージァストから愛情を込めてそう呼ばれるGT-Rは、もちろんチューニングの素材としても人気を博している。ドラッグレースでレコードを競う一方、1000psオーバーの猛者を街でも普通に走らせる。そんなアメリカ流GT-Rチューンの最新トレンドに迫る。

 

 

1000psオーバーのデイリードライバー

 

 

歴代のスカイラインGT-Rが正規輸入されていなかった北米のJDMファンにとって、R35は突如あらわれたゴジラのごとき存在。高度なエンジニアリングが施されていながら、ポルシェやランボルギーニよりも安価。まさにクール・ジャパン! だが、その素性の良さだけでは飽き足らないスピード・ファナティックたちは、アメリカ各地にあるプロチューナーへと駆け込むのである。

 

カリフォルニア州オックスナードにあるプロショップ『RDエンジニアリング』のロニー・ディアスが、カスタマーのために仕上げたこちらのGT-R。一見すると外観はほとんどストックのままだが、リヤにまわるとその印象は一変する。15インチのドラッグ用ホイールに極太スリックを履かせ、セーフティパラシュートもしっかり装備。日本ではまず見かけることのない出で立ちは、西海岸の空によく似合う。

 

インテリアに目を向けるとカスタムメイドのロールケージとフルカーボンのバケットシートがドラッグレーサーであることを物語るが、一方でインパネやステアリングホイールなど大半のパーツは純正のまま。つねに「アピアランスよりもパフォーマンスを重視する」と言うロニーは、「自分が何ができるかを隠し、何をしたかは黙っている」のがスタイルだと語る。最も得意としているのは、ECUTEKを使ったコンピュータチューン。正体不明のハッカー集団『アノニマス』よろしく、オーナーにさえどんなマジックを施したのか、尻尾は掴ませない。

 

そんなロニーが、質問に明確に答えてくれたのが使用する燃料について。そしてその燃料こそ、昨今アメリカで流行っている「ドラッグレースと街乗りの両立」というトレンドを生んだ大きな要因でもある。

 

2000年代の初頭からアメリカで急速に普及した、エタノール(植物由来のアルコール)とガソリンを混合して作るバイオフューエル。最もポピュラーな「E85」は、エタノール85%とガソリン15%を混合したもので、今ではどこのスタンドでも普通に手に入る。エタノールはガソリンよりも燃焼速度が遅く、生み出すエネルギーの量も小さい。裏を返せばノッキングが起きにくいということ。そのため大容量インジェクターと高圧ポンプ、専用のコンピュータ制御を組み合わせて、最適な点火時期に大量のE85を噴射することができれば、ハイパワー化しながらも、発生する温度が低い分、熱やノッキングによるダメージを招きにくく、加えて水温や油温までマネージメントできるのだ。

 

その辺のスタンドで手に入れた燃料で街中を流すのはもちろん、そのままレーストラックでレコード更新を狙う。そんなことが日常的に行われているアメリカは、やはりケタが違う。だが、その遊びのベースとなっているのが日本車だというところが、われわれ日本人としても誇らしいではないか。フルタイム4WDでスタビリティに優れたR35なら、1000psオーバーでもオンロードでトラクションが逃げる心配もない。ロニーも認める。

 

R35GT-Rは、やはり最も「Street-able(ストリータブル)なスーパーカー」なのだ。

 

Photo:Akio HIRANO TEXT:Hideo KOBAYASHI

 

 

 

 

2000ccのインジェクターと400lphの高圧フューエルポンプを備え、ロニーの手による純正ECUチューンを加えることによって、最高出力は推定1300psを実現。フレックスフューエルセンサーを装備することで、つねに燃料の混合率がモニターされ、適切な燃焼制御が行われる。エンジンルーム内には燃圧計やオイルキャッチタンクも備わり、燃料およびオイル管理のきめ細かさもうかがわせる。主要部品には熱対策としてセラミックコートが施されているとのことだが、メカチューンやタービンなどの詳細は明かしてもらえなかった。ドラッグレースにおける1/4マイルのベストは8.39秒、最高速度は169mph(約272km/h)をマークする!

 

 

フロントには18インチのエンケイGTC01とドラッグ用ラジアルタイヤを組み合わせ、リヤにはドラッグ専用のボガート・レーシングホイールとミッキー・トンプソンのスリックタイヤを装着。15インチホイールに外径28インチのドラッグタイヤを履かせるだけで、かくも土着感の濃いスタイルに仕上がろうとは…。オンロードへと繰り出す際には、リヤホイールとタイヤは交換される。レースでの安全性を確保するため、リヤブレーキはRDエンジニアリングのオリジナルで強化されている。

 

おそらくオーナーの好みも反映されていると思われるが、ドラッグレース用のパラシュートを装備することを除けば、エクステリアはほとんどノーマルと変わらない。そのパラシュートもオンロードを走るときには外してしまうため、街ゆく人はまさか1300psのゴジラがすぐ側を走っているとは思わないことだろう。

 

 

 

室内にはTecnocraftのドライカーボン製フルバケットシートとロールケージを装備。それとパラシュートの操作用レバーを備える以外は、いかにも純正然としている。シフターはノーマルのままだが、トランスミッションと前後アクスルはドラッグレース用の高強度パーツに変更済み。トランクルーム内には無骨ながら剛性アップにむちゃくちゃ効いていそうな補強フレームが装着されている。

 

 

 

スペック

■エンジンVR38DETT V型6気筒DOHCツインターボ/RD Engineering・3.8ℓレースロングブロック、Spec 35Rターボ、純正コンピュータ チューンド バイ ロニー・ディアス(EcuTek)/Extreme turbo systems・レースインタークーラー/Boost logic・インテークマニフォールド/Injector Dynamics・2000ccインジェクター/Walbro・トリプル400lphフューエルポンプ

■ドライブトレインApex Motoring・ステージ5 トランスミッション/DSS(The Driveshaft shop)プロレベルドラッグアクスル

■フットワークRD Engineering・ドラッグコイルオーバーサスペンション/RD Engineering・リヤドラッグブレーキキット

■ホイールENKEI・GTC01(F18×10.0)/Bogart Racing Wheels(R15×11.0)

■タイヤM&H・レースマスタードラッグラジアル(F275/45R18) Mickey Thompson・スリック(R10.50”x28”)

■エクステリアカスタムドラッグロールケージ with Dj Safety パラシュート

■インテリアTecnocraft・ドライカーボンファイバーシート