【新型スープラ開発秘話 PART.3】開発責任者 多田哲哉氏インタビュー

公開日 : 2018/09/01 13:55 最終更新日 : 2018/09/21 00:31


チューニングは大歓迎!

新しいスープラ伝説が幕をあける

 

稲田:ファンも直6ターボエンジン搭載の事実はうれしいだろうな。やっぱりスープラ神話を支えたのは心臓部、2JZエンジンありきでしたからね。どんなにパワーを出しても壊れない国内最強ユニット。もちろん、それは世界中のチューニングファンのあいだで共通認識ですよ。

 

多田:やっぱりそうなんですね。2018年3月にジュネーブで新型スープラのコンセプトを出したじゃないですか。そして先週グッドウッドで量産型のプロトを走らせたわけです。でね、どれだけの人に言われたか。2JZは載るのかって。これは3JZなのか?って。グッドウッドでは小さい少年がボクのところにやってきて「2JZなんだろうな!」って聞いてくるくらいでした。子供がですよ!

 

稲田:2JZは奇跡のエンジンですよ。だからこそ、みんな期待してしまうんです。ちなみに新型スープラはエンジンが数種類あるという噂もありますね。直6のほかにV6と直4なんて話もあります。

 

多田:そこはノーコーメントで!

 

稲田:グッドウッドの走行動画を拝見したのですが、どうもエキゾーストサウンドがV型っぽくて気になっていたんですよ。

 

多田:……。あ、稲田さん! スープラが発売されたら1台お渡ししますので、ぜひ2JZエンジンを載せてください。それでボンネビル目指してください!

 

稲田:おーいいですね! BMW製のエンジンもハイスペックなんでしょうけど、やっぱりボクは日本の最強エンジンで世界最速を目指したいですからね! あ、ここは証拠としてカットしませんからね(笑)!

 

多田:わかりました(笑)

 

稲田:ちなみに開発ステージはやっぱりニュルとかですか?

 

多田:いや、じつはね、今回のスープラの開発に関する一番の特徴はその部分なんです。ふつうはメーカーのテストコースで作っていくんですけど、スープラは8〜9割を一般道で開発しているんですよ。とうぜんサーキットやテストコースも使いましたけどね。だから、このクルマの初期プロトタイプなんて、いきなりフランスのマルセイユの山の中を走らせたりしてました。あ、じつは2017年から日本国内でもコッソリと一般道でテストしているんです。今年からはテスト車両も増えたので、あちこち走らせていますよ。けっこうツイッターなどで騒がれましたね。

 

稲田:それもプロモーションの一環なんですよね、きっと。

 

多田:そうですね。本当は、テスト車両が一般道を走っているときに、その位置をユーザーのみなさまがわかるようなスマホのアプリを作って配信したいんですけどね!

 

稲田:それはいいですね! 新型車のティザーキャンペーンはどんどん劇場型になっていますし。そういうのはおもしろいと思います!

 

 

ストリートで9割ちかくを開発しているという新型スープラは、海外のみならず日本国内からもテスト車両の目撃情報が多数よせられている。

 

 

 

 

チューニングへの配慮も万全

 

稲田:そういえば新型スープラは、レースに使うことを想定して設計しているとのとこですが。

 

多田:そうですね。レースバージョンにしたとき、各オイルクーラーの取り回し位置を考えてあらかじめホース用の穴を開けていたり。そういうことを考えて、ベースの設計を何度もやり直しました。なので、発売されてチューナーのみなさんがイジっていくときに「おお!」と思ってもらえるんじゃないでしょうか。あとから改造すると面倒なところをあらかじめやっているってイメージですね。とくに、エンジンチューニングなどをしていったときに問題になるクーリング面はかなり考えましたよ。だから量産状態でミッションオイルクーラー用のドレンも開いているし、クーラーコアをマウントするスペースも用意したんです。

 

稲田:そこまでの配慮って、日本車はもちろんヨーロッパ車でもやってないですよね。そういうところは多田さんがBMW側に理解させながら進めたの?

 

多田:そうですね。だからBMW側も最初は「は?」でしたよ。でも、話は通じるんですよね彼ら。ちゃんと理由を説明すれば理解してくれるんです。

 

稲田:そういうアイディアは、86開発を通してカスタムの世界を知った多田さんならではでしょうね。巷では新型スープラはほとんどBMW製なんじゃないのっていう声を聞きます。Z4とバッジが違うだけとか。そのあたりはどうなんでしょうか。

 

多田:86とBRZは基本的におなじクルマでしたよね。そして今度もBMWのZ4とスープラがただのバッジ違いかというと、まるでそうじゃないんです。企画段階でそれぞれ全く違うコンセプトが立ち上がって、それから共用できる部品は共用しましょうという通常とは逆の順番で進めましたから。

 

稲田:BMWの部品はたくさん使っているけど、まるっきり違うクルマというわけですね。

 

多田:そうですね。というか、トヨタでもそこがもっとも重要なところでした。BMWの言いなりにならず、どれだけトヨタの味を出せるか。そこで、TME(トヨタモーターヨーロッパ)にいる故・成瀬弘さん(トヨタの伝説的マスターテストドライバー)の弟子「ヘルヴィッヒ・ダーネンス」を新型スープラの開発ドライバーに起用したんです。彼はドイツ語が話せて日本人のスピリッツも理解している。BMWと直接意見をぶつけあえるし、なにより遡っていくと成瀬さんの想いがスープラにも注がれているってことも大きかった。

 

稲田:日本人のクルマ好きはヨーロッパ至上主義が多いです。でも、ボクが見てきたなかでそこまで優れたクルマはなかった。ゆいいつポルシェくらいですかね。

 

多田:ですね。ボクがBMW側にポルシェを超えるスポーツカーを作ろう!って言ったら、最初笑われたんですよ。おまえはなにをバカなこと言ってんだって。ポルシェが好きならポルシェを買えって言うんですよ。ドイツってメーカー同士が仲いいんですよね。で、それぞれ住み分けしてクルマを作っているという意識がある。日本はそれぞれがライバルってかんじだから、考え方がまるで違うんですね。そういう文化の違いには戸惑いがありましたね。

 

 

グッドウッド2018のヒルクライムイベントに出走したスープラのプロトタイプ。TME(トヨタモーターヨーロッパ)が主導となる今回の走行は、偽装によってディテールはわかりにくくなっているが市販車に限りなくちかいスタイリングを披露している。

 

 

 

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