【新型スープラ開発秘話 PART.2】開発責任者 多田哲哉氏インタビュー

公開日 : 2018/09/01 13:52 最終更新日 : 2018/09/21 00:30


開発は最終段階に突入

心臓部は新世代の3ℓ直6ターボ!!

 

稲田:多田さんは約束通り86を市販してくれた。そして作ってくれた以上は、ボクたちとしては誌面越しにクルマの魅力を真剣に伝えていかなきゃいけないと思いましたね。ボクの考えは、メーカーさんはクルマを作って売るまでが仕事。そこから先、エンドユーザーにクルマの本当の魅力を伝えて新しい価値観を与えるというのはチューニングの世界の仕事だと思っていますからね。

 

多田:そうですね。本当にチューナーさんたちが頑張ってくれたと思っています。チューニングのパーツもたくさん作ってくれましたもんね。そして86のいろんな使い方を示してくれて、世界がどんどん広がっていきました。あれがなによりありがたかったです。

 

稲田:その最前線がオプションでやっている86&BRZの最高速アタックかもしれないですね。

 

多田:え? 最高速ですか?

 

稲田:はい。86やBRZに乗るユーザーって、なんとなくファッション感覚で乗っているひとが多いですよね。それじゃあ発展性がないと思ったんです。そこでボクは最高速をやろうと思った。最高速はエンジンパワー競争であり、チューナーたちの技術戦争なんですよね。最初は300キロなんて出ないだろうなーと思ってたんですけど、1年も経たないうちに310キロを超えてきましたからね。ビックリですよ。

 

多田:いやぁすごいですね。開発時に300キロなんて想定もしてないですから!

 

稲田:最高速ってね、けっきょくトータルチューニングなんですよ。エンジンのパワーをあげていくと、足まわりやボディ剛性も見直さなくてはならないですから。たぶん、いまのチューンド86は多田さんが開発されたときの100倍くらいすごいクルマになってるんじゃないですかね!

 

多田:すごいなぁ。そのうちボンネビルとか行ってほしいですね!

 

稲田:ボンネビルですかー。トヨタさんがスポンサーになってくれたらぜひ!

 

多田:あ、そういえばね、ボクは新しいスープラを現在開発しているんですが、先週だったかな、「スープラが発売されたらボンネビルに持っていく!」って燃えているチューナーがアメリカにいるって話が伝わってきましよ。稲田さんも日本でチームを作って、ボンネビルでスープラ日米対決とかしてくれたらおもしろそうだなー。

 

稲田:お、ついに多田さんの口から新型スープラの名前が出ましたねー。では、今日の対談の核心に迫っていきましょうか!

 

 

BMWとの協業で新型スープラは誕生する

 

稲田:新型スープラはBMWとの共同開発ですよね。86でもスバルと協業してましたけど、やっぱり大変ですか。

 

多田:そもそもね。86を2012年に発売したんですけど、そのときにボクは二度と他社との協業はやりたくないと思ったんです。本当に大変で。会社の考え方がまるで違いますからね。でも、いまBMWといっしょにやっていて思うのは、スバルのみなさんは本当に理解力が高くて、86&BRZプロジェクトはやりやすかったんだなーってことです。

 

稲田:BMWは頑固者が多そうですからね! そもそも協業の話はBMW側からきたんですか?

 

多田:2012年の5月にヨーロッパのジャーナリストを対象とした86の試乗会をやったんですね。スペインのバルセロナです。その会期中に日本から電話がかかってきて。相手は役員でね。で、だれにも内緒で明日BMWの本社に行ってこいって。そこでBMWと一緒にクルマが作れるかどうかを調査してこいって。ええー!? でしょ。とうぜん試乗会では大騒動になって…。あいつはどこに消えたんだって。

 

稲田:しかし、どこからBMWの名前が出てきたんだろうね。

 

多田:もともとBMWのディーゼルエンジンをトヨタが買って、ヨーロッパで販売するクルマに搭載しようという企画が先にスタートしていたんです。そして、BMWとの技術提携をもっと深めるプロジェクトの一環として、トヨタとBMWでクルマを共同開発するって話が持ち上がったってかんじですかね。

 

稲田:じっさいBMWの印象はどうだったんですか? やっぱり頑固?

 

多田:いやね、最初は本当に愛想がよくて(笑) で、日本に気楽な返事を送ったんです。オッケーかなーって。それが間違いのはじまりでしたね。

 

稲田:あらら。そしてそのまま多田さんがスープラの担当になったというわけですか。

 

多田:そうですね。86が終わって暇だろーみたいなノリでね。いまの章男社長は、つねづねボクたちにスポーツカー3兄弟を作れって言ってました。86は次男。で、BMWに行けって言われたとき、ボクは直感的に「あ、これは長男のスープラを作るためだな」って思ったんです。だってBMWと言えばFRレイアウトにこだわりを持っていて、直列6気筒エンジンを唯一(2012年当時)作っていたメーカーでしたしね。わざわざBMWに行けって言う意味は、それしかないですから。

 

稲田:時代がV型エンジンに移行していくなか、直6エンジンってのは時代遅れに思いませんでしたか?

 

多田:いやぁ、直6エンジンって改めて研究してみると本当に素晴らしいんですよ。走りに特化しているっていうか。変な振動もないしバランスもいい。音もいいですしね。最近ではメルセデスも直6エンジンを作っていますし、価値が見直されているのかもしれませんね。

 

稲田:ということは、新型スープラはBMWの直6エンジンが搭載されるってことですね。

 

多田:はい。3ℓの直6ターボですね。それも既存エンジンではなく新設計の次世代型ですね。

 

 

 

 

スープラの全貌が具体的な形になって現れたのは3月に行われたジュネーブモーターショー会場。「GRスープラ・レーシングコンセプト」という車名で登場したそれは、大きく張り出したエアロパーツで完全武装。ピュアスポーツとしてスープラが復活することを印象付けた。

 

 

 

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